この話をすると、こう考える人もいるでしょう。
「やっぱり、地方の子は塾も少ないし、教育環境が悪いから学力で負けるんだよ」と。僕も以前はそう思っていました。しかし、全国の高校で授業をするようになって、考えが変わりました。
僕は実際、北は北海道、南は沖縄まで、全国の地方の学校で生徒たちに教えています。そこで出会う子たちは、本当に優秀です。地頭でも、努力量でも、首都圏の子たちに負けていません。むしろ、地元の進学校でトップを走る子たちの中には、首都圏の有名校の生徒以上に光るものを持つ子がたくさんいます。
学力が高いのに東大を目指さない理由
それなのに、彼らはなぜか東大を目指さない。あるいは、途中で諦めてしまう。なぜでしょうか。
僕が思うに、足りないのは「先生」や「塾」ではなく、「比較対象」です。首都圏の進学校に通う子にとって、東大生は「先輩」です。同じ部活のひとつ上の先輩、同じ塾の自習室で隣に座っていた人、文化祭で見かけた赤門の中の人——とにかく、生身の東大生が身近にいる。「ああ、こういう人が東大に行くんだ」「自分とそんなに変わらないな」と、肌感覚でわかる。
ところが、地方の子にとっての東大生は、テレビの中の存在です。クイズ番組で難問を解く人、ニュースで「天才」と紹介される人——つまり、「自分とはまったく違う種類の人間」として映ってしまう。
結果として、地方の受験生から、こんな声をよく聞きます。
「東大なんて、自分とは住む世界が違う人が行くところでしょう?」
これは、決して謙遜ではありません。本気でそう思っているのです。なぜなら、彼らの周りには「東大に届くかもしれない、近い距離にいる人間」がひとりもいないから。
その結果、「自分の学力が、東大に届くのか届かないのか、判断する基準そのものがない」という状態になります。

