例えば、過去のメッセージのやり取りを加味してパーティーの準備をしたり、「先週の旅行で撮った写真のうち、Aさんが写っているものだけを見せて」といった指示も可能になる。メールの代筆をするとき、上司に対するメールと友人に対するメールとでは書き方が変わる。画像の中に含まれるスケジュール情報を判別し、カレンダーに登録する、といったことも可能だ。
スマホやPCを使うとき、我々はアプリを開いて操作する、というスタイルに慣れ親しんできた。しかしここからは、Siri AIとやりたいことを相談し、作業を進めることもできる。仕事をしつつ音声で別の作業をお願いしたりできるし、アプリの使い方をよく知らなくても、その価値をAIが引き出してくれるようになる。
24年にアップルがApple Intelligenceを発表したのは、22年後半から続く「ChatGPTショック」の中、iPhoneやMac、iPadなどの機能としてAIを取り込む試みだ。
当時アピールされていたのは主に2つの要素だった。
1つは「自分の行動が持つ文脈を活用すること」だ。AIにチャットでなにかを聞くだけではなく、iPhoneやMacの中で自分が行った行動を把握し、AIが反応する。例えば「母親と食事に行くのにいいレストラン」を聞くと、母親が近くへ飛行機でやってくることを過去のメッセージから読み取り、空港近くのレストランを教える。
2つ目は「プライバシーを重視する」ことだ。自分の文脈を使うとなると、その情報はプライバシーの塊になる。そこでアップルは「自分が持っている機器の中でほとんどの処理を完結し、クラウドには個人情報をアップロードしない」「処理能力の問題からクラウドを使うときには、処理はするがクラウドにデータを残さない仕組みを使う」という方針を打ち出していた。
この2点は、今回発表された第3世代Apple Intelligenceでも、なにも変わっていない。機能アピールの中には、2年前のWWDCや他社のAI機能で見たものも少なくない。
このことは「アップルがAIで出遅れている」という評価につながった。今回はその評価を覆すことが狙いでもある。
Googleと組んでAIを再開発
なぜアップルは2年前に失敗したのか? 簡単に言えば「必要なAIの能力の見積もりが甘かった」からだ。
アップルが目指していたのは、単純に「AIで画像を描く」「AIを検索代わりにする」ということではない。AIにお願いすると、自分が求めている作業を代わりにやってくれるようなイメージのものだ。これは現在では「エージェンティックAI」と呼ばれ、重要な要素となっている。
だが、こうした処理には賢いAIが必要になる。2年前のApple Intelligenceが備えていたAIには十分な能力がなかった。アップル内部でのテストでは間違いなどが多く、一般提供できるだけの信頼性・確実性を担保できなかったため、思い切ってAIの再開発が行われたのだ。
