レアアース。この現代産業に不可欠な物質について耳にしない日はない。レアアース(希土類)と呼ばれるが、資源的には世界に普遍的に存在しており、まれではない。その採掘や製錬に困難さが伴うことから、一時は世界の生産量の97%を、今でも7割近くを中国1国に依存する状況が続いている。その困難さの中心にあるのが放射性物質であるトリウムの存在である。
レアアース鉱物にはトリウムが同伴する。レアアースを製錬する際、後工程を汚染させないためまずトリウムを分離するが、このトリウムの対処にコストを掛けることなくダンピングを行い、シェアを拡大させていったのが中国である。もし放置したトリウムがことさらに問題を生じさせないのであれば、中国もその施策を継続できるであろう。むろん、現実はそうはならない。
中国が「トリウム」をどう扱ったか
「なぜ日本がレアアースで中国に負け続けているのか、最大の敗因は『価値ある資源』のトリウムの放置だ」(2026年5月30日)で見たように、1980年代から中国におけるレアアースの生産は急激に拡大していった。分離されたトリウムはテーリングポンド(尾鉱)に廃液の状態で貯められていく。
当時の尾鉱は十分な遮水対策が施されていたわけではなく地下水に浸透していった。尾鉱の直接的な流出事例として最も広く知られたのが、尾鉱のすぐ南側に位置する内モンゴル自治区打拉亥村(ダラハイ村)の事例だ。1990年代中盤から2000年代初頭にかけて、家畜の大量死や住民のがん、白血病、皮膚病の罹患率が周囲の地域の数倍に跳ね上がり、中国国内でも「癌症村(がんの村)」として知られるようになった。トリウムの影響だ。
外部不経済のトリウムを内部化する、すなわち国や企業がコストを掛けて環境汚染対策を施すなら、ダンピング戦略を継続することはできない。コストを掛けて環境汚染対策を施した場合でも、競争力を落とさないためにはどうしたらよいか。トリウムを利用できないか。中国の辿った道を見てみよう。
2007年12月4日から6日にかけて北京の清華大学で「TU2007」というシンポジウムが開催された。トリウム環境汚染の顕在化からまだ日は浅い時期、かつ参加者も66人程度なので決して大きな会議ではない。
ただ、中国が今後の道筋を見極める重要な会議であった。TUとはThorium Utilizationの頭文字、トリウム利用の可能性を探る会議だ。国際原子力機関(IAEA)と共催された。参加国は中国のほかカナダ、アメリカ、インド、オーストラリア、ブラジル、フランス、韓国、オランダ、ノルウェー、ロシア、スロバキア、そして日本だ。
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