今後も中途採用は増加するでしょう。新卒採用難が解消される見込みはありません。とすれば、退職一時金の縮小・廃止という動きが加速することは間違いなさそうです。
その際、従業員、とくに不利益を受けやすい中高年に対し、人事部門は慎重に対応する必要があるという見解がありました。
「退職一時金の一方的な引き下げは、労働条件の不利益変更に該当するでしょう。退職給付はただでさえ難解なので、引き下げを進めるにあたり、組合としっかり協議し、従業員に丁寧な説明をし、理解を得ようと思います」(輸送機)
「退職一時金だけでなく、このところ給与・福利厚生など新人・若手に有利、中高年に不利な制度改正が続いています。『世の中のトレンドだ』という一言で済ませるのではなく、世代間の対立を煽らないよう配慮する必要があります」(商社)
退職金税制の見直しが急務
最後に、国に退職金税制の改正を改めて要望したいと思います。
現在、退職一時金には退職所得控除があり、次のような計算式になっています。
・勤続20年以下:40万円 × 勤続年数
・勤続20年超:800万円+70万円 ×(勤続年数-20年)
例えば、AさんとBさんが30年間働いた場合、
Aさん:30年連続勤務 → 控除額1500万円(800万円+70万円×「30年-20年」)
Bさん:20年勤務、転職して10年勤務 → 控除額1200万円(800万円+400万円)
となり、同じ30年間働いても、転職したBさんは転職しないAさんよりも控除額が小さくなります。税制によって、Aさんのような長期勤続者を優遇、Bさんのような転職者を冷遇しているわけです。
政府は経済界の要望を受けて、23年から「労働移動(転職)の促進」「成長産業への人材移動」を政策課題に掲げました。そして「長期勤続者だけを税制で優遇する仕組みは、転職をためらわせる要因になっている」とし、「骨太の方針」に退職金税制の見直しを明記しました。
ところが、それから3年経っても税制改正は行われておらず、長期勤続者を優遇、転職者を冷遇する仕組みが続いています。
長く日本の長期雇用を支えてきた退職一時金の見直しは、いわば働き方改革の総仕上げ。企業・組合・政府が協力し、知恵を出し合い、新しい日本の働き方を作っていきたいものです。
