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移民が増え、多文化的な教育が広がる令和の歴史教育のあり方は? スイスに見習う"前提を共有しない教室"

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世界の歴史教科書を読み比べてみた
統一教科書がないスイスでは、授業はどう行われるのでしょうか?(写真:Kisa_Markiza/PIXTA)
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では、統一教科書がないなかで、実際の授業はどう行われるのでしょうか。実は我々は、スイスのあるボーディングスクールに実際に取材に行ったことがあります(自分ではなく、仲間が取材したので、ニュアンスに多少の違いがあるかもしれない点だけご承知おきください)。

スイスのとある学校では、第二次世界大戦について「ドイツのこの判断は正しかったのか」「別の選択肢はなかったのか」といったテーマを設定し、生徒を複数の立場に分けて議論させる、ディベート型の授業が行われていたといいます。

ひとつの正解を最初から与えるのではなく、史料や根拠をもとに自分の立場を組み立て、相手の主張を聞き、反論し、考えを更新していく。そうした授業です。

この授業は、公開資料で確認できるスイスの歴史教育研究とも方向性が重なります。スイスの戦時史やホロコースト教育を分析した研究では、2006年の教材『Hinschauen und Nachfragen(よく見て、問い、考える)』が、確定した「正解」を一方的に示すよりも、問いを開いたまま生徒に考えさせる構成を採っていることが指摘されています。

そこでは、生徒が歴史叙述を受け身で覚えるのではなく、歴史の語られ方そのものを批判的に捉える力を養うことが重視されています。

なぜ、こうした教え方が必要になるのか。理由のひとつは、スイスの教室が、そもそも単一の歴史観を前提にしにくい空間だからです。第二次世界大戦をめぐっては、ヨーロッパの各国・各地域で記憶の仕方が異なります。

さらに現代のスイス社会は移民を含む多様な背景の人々で成り立っており、教室のなかにも異なる家族史や記憶を持つ子どもたちがいます。そうした空間で一方向から「これが唯一の正しい歴史です」と教えるより、複数の視点をぶつけ合いながら理解を深めるほうが、現実に即しているのです。

日本も他人事ではないかもしれない?

この点は、日本にとっても他人事ではないのかもしれません。今後、日本でも移民が増え、インターナショナルスクールや多文化的な教育環境がさらに広がっていくとすれば、歴史教育もまた「ひとつの国民的物語を、全員が同じ温度で受け取る」前提では立ちゆかなくなる可能性があります。

実際、自分が沖縄で取材したある小学校では、アメリカ人の子どもと日本の子どもが同じ空間で学ぶなかで、歴史や戦争について単線的に教えるのではなく、立場の違いを踏まえて両論を並べながら考えさせる授業を行っていました。相手の歴史認識をただ否定するのではなく、「なぜそう見えるのか」まで含めて学ぶ。その姿勢は、スイスの教室で見られる学び方とどこか通じています。

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