ここまで述べてきたように、現在の情勢を見据えたうえで論理的に考えれば、一括返済を選ぶのは得策でないケースのほうが多そうだ。
しかも、80歳完済の融資を受けた場合、その年齢に達するまで団体信用生命保険が適用される。完済前に契約者が他界しても、保険金で残債が清算となる。
必要に迫られれば売却
とはいえ、理屈はどうであろうと借金を抱えたまま老後を過ごすことに、心情面で耐えられない人はいるようだ。さらに藤川さんによれば、こんな事例もあったという。
「負債側(住宅ローンの利息負担)と資産側(運用で得られる利益)を秤にかけ、後者のほうが多ければ完済を急ぐ必要はありません。
それでも、一括返済に固執したお客様もいました。親が営業担当者の甘言に乗せられて大損したので、運用には絶対に手を出したくないと頑なだったのです」
もちろん、一括返済にもメリットがある。当初の返済計画よりも支払利息の総額を大幅に減らせることがその一つだ。冒頭で触れたように、毎月の返済負担がなくなれば支出も減る。
しかしながら、必ずしも万人の家計にゆとりが生まれるわけではない。藤川さんはこう訴える。
「手元の蓄えがあまり潤沢でない人は、一括返済に充てるべきではないでしょう。
日本国債などで運用していた場合は、必要に迫られれば売却して現金化することが可能です。しかし、一括返済に充ててしまったお金は、二度と取り戻すことができません」
