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「入れ歯を飲み込んだ」と訴えた女性が5日後死亡…解剖で判明した"見落とされた原因"

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(写真:Maximusnd/PIXTA)
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「総入れ歯」は上下でまったく形状が異なります。上の入れ歯は上顎前面を覆ってカポッと吸着するような半円状ですが、下の入れ歯は舌のスペースを邪魔しないようなU字型になっています。

(画像:『法医学教授が教えている 死体の授業』)

体を切り開いてはじめてわかった〝死を招いた肺の状態と入れ歯の行方〟

なにが女性を死に追いやったのか。解剖によって、その原因を突き止めることが私たち法医解剖医の仕事です。まず、解剖した肺の状態は最悪でした。肺を切ると膿瘍(のうよう、膿のこと)がにじみ出てきます。肺胞は本来であれば、空気がとおるようなスポンジ状になっています。しかし、のちに肺の病理組織を顕微鏡でたしかめたところ、女性の肺は好中球(白血球の一種)が増加して炎症を起こし、隙間がみっちりと埋めつくされていました。重篤な肺炎の所見です。

また、死亡した女性は甲状腺腫大(甲状腺が大きい状態)があったことが死後に明らかになりました。のどの前側にある甲状腺の腫れにより気管が狭くなり、入れ歯が引っ掛かりやすかったのではないか。そう推測した私は取り出した咽頭を切り開き、粘膜のはがれ落ちた痕、すなわち潰瘍をみつけ出しました。U字型のその跡に研修医が取り出した「行方不明だった下の入れ歯」を重ねたところ、両者はぴったり一致したのです。

解剖の結果、私は「咽頭部の義歯の嵌頓に基づく肺炎」と死因を診断しました。肺炎を引き起こした原因は、咽頭部の膿瘍だったと考えるのが妥当でしょう。要するに、喉の奥に入れ歯がはまっているので、当然食べ物は喉を通りません。それでも食べようとした結果、そこから感染が広がり、たまった膿が肺にまで広がったと考えました。もしくは、食べようとしたものが隙間から気管に入り込み、それを誤嚥して誤嚥性肺炎にいたった可能性もあります。

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