23年以降、日韓の協力関係は半導体サプライチェーンの再構築や経済安保、先端技術・エネルギー・人材の共同開発といった多角的な戦略提携のフェーズへと移行した。これは韓国の政権交代といった内政要因に左右されない、冷徹な国際環境の圧力がもたらした必然の帰結である。
もはや両国協力の成否は、関係改善という「宣言」そのものではなく、世界的な供給網の衝撃やエネルギー危機から自国経済と国民生活をいかに守り抜くかという、具体的な「政策ガバナンス能力」の優劣にかかっている。
日韓ともに試されている「政策ガバナンス能力」
この文脈において、近年の日本経済が重ねてきた先駆的な試行錯誤は、今後の日韓両国が目指すべき経済政策のあり方を再考するうえで、極めて深い示唆を投げかけている。
日本政府は長期デフレと低成長からの完全脱却を狙い、需要を意図的に供給能力以上に引き上げる「高圧経済(high-pressure economy)」政策を断行してきた。そもそも高圧経済とは、需要が供給を上回るインフレギャップを意図的に作り出すことで労働市場の逼迫を極限まで高め、その圧力を原動力として賃金上昇と生産性向上を同時に引き起こそうとする政策思想である。
かつてアメリカの経済学者アーサー・オークン(1928~80年)が提起し、のちにジャネット・イエレン財務長官が長期停滞克服の処方箋として再評価したことで世界的な注目を集めた。
その核心は、単なる一過性の財政出動や景気刺激策の域にとどまらない。労働力不足の「高圧」に企業をさらすことで、低賃金や長時間労働に依存した旧来の安易なビジネスモデルを維持不可能な状態へと追い込み、自動化・情報化・研究開発といった供給側のイノベーションへと強制的に舵を切らせる構造改革メカニズムなのである。
政府は財政均衡の目標を事実上棚上げしてでも、AIや半導体、エネルギーといった戦略産業へ巨額の国費補助や税制優遇を投じている。とくに国内設備投資に対する税額控除や即時償却制度の導入は、海外に滞留していた企業資金を国内へ還流させ、この高圧のエネルギーを国内の実体投資へと結びつけるための、極めて意図的な布石であった。
