1人が両方を兼ねるケースもありますが、分けるケースも少なくありません(両親2人暮らしで、一方がとても元気なら、両方をその親が担う場合も)。
太郎さんの両親は2人暮らしで、母親が主たる介護者ですが、1人暮らしの場合は、主たる介護者が不在となるケースもあります。主たる介護者がいなくても、キーパーソンがいれば、医療や介護の専門職と連携し、在宅を継続している高齢者は大勢います。
ときどき、ケアマネジャーからこんな話を聞きます。
「遠方で暮らす長男さんから『ホームヘルプサービスを増やしてください』と電話がかかってきたかと思えば、長女さんからは『施設を探してください』と言われるんです。それで、当の本人である親にどうしたいか確認すると『今のままがいい』と。これでは、介護のプランを考えることができず、とても困るんです。家族側の意見をまとめて、窓口を1本化してほしい」
仕事で培ったコミュニケーション力が役立つ
兄弟が複数いる場合は、誰がキーパーソンとなるか、話し合って決める必要があります。「キーパーソンは、仕事感覚でできるので、私は嫌ではありません。病院もケアマネジャーも、“仕事”としてされているので、こちらも、感情論ではなく、できること、できないことを整理して向き合っています」(太郎さん)。
ただし、仕事でも、担当者にすべての決定権があるわけではなく、返答できない案件が出てきたら、職場に持ち帰ると思います。介護のキーパーソンについても、同じことが言えます。すべての決定権があるわけではなく、あくまで家族側の窓口です。新たな課題が出てきた場合は、本人、主たる介護者やその他家族と意思疎通をしたうえで、病院やケアマネジャーと話し合います。
一方、話し合いの結果、親やきょうだいがキーパーソンを担ってくれるケースもあると思います。そうなった際、「自分は関係ない」という姿勢ではうまくいきません。特に、高齢の親がキーパーソンも担う場合は、寄り添う姿勢が必要でしょう。
もちろん、親の介護では、食事介助やトイレ・入浴介助などの直接介護はとても大切です。が、キーパーソンを担うことも同じくらい重要なものとなってきます。
ただ、医療、介護の専門職との対話はともかくとして、家族間の意見調整は、「ちょっと面倒」と思うこともあるかもしれません。家族だから、感情論は出てくるし、遠慮がないので、ときには言い争いに発展することもあるかもしれません。
ですが、仕事では、取引業者とは、意見が合わなくて、喧嘩はしません。「どう言えば、こちらの考えを聞き入れてくれるだろう」と思案するはず。親やきょうだいとの対話でも、仕事で培ってきたコミュニケーション力があれば、きっと乗り越えられるでしょう。
また、キーパーソンは電話やメールなどを利用すれば、親のすぐ傍にいなくてもだいじょうぶ。つまり、三世代同居でなくても、もちろん二世帯同居でなくても、親の介護を支えることはできるということです。
(参考)2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況
