もし、こうした変化が不可避で、よりマッチが増えるとしたら、人事部門など企業側はどう対応するべきでしょうか。
現在、多くの企業の人事部門は、メンター制度を導入して先輩社員に新入社員の相談役(見張り役?)をさせたり、新入社員が参加するSNSを監視したりするなど、早期離職を阻止しようと努めています。
ただ、こうした対策は、ミスマッチに対してはともかく、よりマッチには有効ではありません。新入社員は先輩社員にミスマッチの不満を打ち明けるかもしれませんが、転職によるキャリアアップのことは相談しないからです。ミスマッチと違って、人事部門がよりマッチの実態を把握するのは困難です。
また、仮に人事部門がよりマッチの志向を持つ新入社員を把握できたとしても、人事部門としては手の打ちようがありません。本人は、会社に対して特段の不満はないからです。ひと言で言うと、人事部門はこの問題にお手上げ状態です。
よりマッチは経営の問題
ところで、今回の取材でもっとも印象に残ったのは、M社の人事部門関係者の次のコメントです。
「人事部門は、いつも経営陣や他部門から『どうしてこんな出来の悪いヤツを採るんだ!』と叱られています。けど、今回の三橋君の一件で、優秀な人材を採用できないのは人事部門のせいではなく、会社の魅力が乏しいせいだと思い知ったようです。大きな声では言えませんが、今回の件はなかなか痛快です」
企業がこの問題で取り組むべきは、新入社員だけでなく全社員に「この会社でキャリアアップしたい」、離職した元社員に「もう一度あの会社で働いてみたい」と思わせるような魅力のある会社にすることでしょう。もちろん、会社の魅力を高めるのは、人事部門よりもまず経営陣が主体的に取り組むべきことです。
よりマッチは、新入社員だけでなく全社員に関係する問題、人事というより全社的な経営の問題だと言えるでしょう。
