物流面では、東海岸港湾とマラッカ海峡側のポート・クランを陸路で結ぶことで、マレー半島を鉄道で横断して2つの海を結ぶ「ランドブリッジ」として新たな輸送回廊を生むことになる。地政学的には、一帯一路の象徴的な存在であるとともに、海運の要衝であるマラッカ海峡への依存を補完しうるルートとしても捉えられている。
3つのプロジェクトの背景には何が?
在来線の近代化・高速化完成と2つの新路線。3つのプロジェクトは一見バラバラに見えるが、背景には2つの大きな流れがある。
1つは、コロナ禍後の人流回復だ。マレーシア国内の移動需要が増加しているのはもちろん、シンガポールとの越境通勤や買い物需要が急速に戻り、既存インフラの処理能力不足が改めて露呈した。ジョホール・バル―シンガポール間の陸路国境の往来は、多い日になると1日あたり50万人が行き来する。RTS整備が急がれる理由もそこにある。
もう1つは、ASEAN域内で進むサプライチェーンの再編である。米中対立や地政学リスクを背景に生産拠点と物流網の分散が進む中、港湾・道路・鉄道を組み合わせた輸送体制の強化はマレーシアにとって大きな課題だ。とくに2つの海を結ぶECRLは、同国内だけでなく国際物流にも変化をもたらすことが予想される。
長い間、「古い路線をどう維持するか」という守りの時代が続いたマレーシアの鉄道。旅客輸送でもLCCや高速バスに押され、旅行者にとってもほぼノスタルジーの対象に過ぎなかった。だが、各地で進むプロジェクトはその姿を大きく変えつつある。現在進みつつある変化は、マレーシアだけでなく東南アジアの鉄道地図を塗り替える出来事として記憶されることになりそうだ。
