日本人を含め旅行者にとってもっとも大きな変化は、マレー半島西海岸を通って南北を結ぶ幹線の電車特急「ETS(Electric Train Service)」の運行拡大だろう。日本の在来線より若干狭い軌間1mの線路を、日本のJR在来線特急を上回る最高時速140kmで走る、マレーシア鉄道(KTM)の主力列車である。
タイ国境のパダン・ブサールから首都クアラルンプールを経て、シンガポール国境の街ジョホール・バルまでを結ぶ西海岸線はKTMの幹線だ。その歴史はマレー半島のイギリス領時代にさかのぼる。1885年に最初の区間が開業し、1923年、現在のマレーシアとシンガポールを結ぶジョホール・シンガポール・コーズウェイの完成によって全線が開通した。
LCCやバスに負けていたが…
マレー半島の鉄道はこの幹線を基礎にしながらも、都市部の混雑、国境輸送の停滞、東海岸側の接続不足といった課題を抱えたまま、更新を先送りしてきた。クアラルンプール近郊区間以外は長らく非電化で、長距離列車はディーゼル機関車が引く客車列車だった。
その間、都市間移動の主役は高速バスやLCCへ移っていった。鉄道はノスタルジーの対象ではあっても、最速でも最安でもない中途半端な存在になっていた。
その状況を変えたのが、2000年代以降に進展した電化・複線化と近代化だ。2010年には中部のイポーからクアラルンプールを経てスレンバンまでの間でETSが運行を開始し、その後2015年には運行区間が北側はパダン・ブサール、南側は東海岸への路線が分岐する要衝駅のグマスまで延長された。

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【残る区間の電化で「ボトルネック」解消】
