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現在の日本経済を概観したとき、われわれは「K字型」と呼ばれる極端な二極化現象に直面している。
一方では、日経平均株価の史上最高値更新や都心マンション価格の高騰、そして資産効果に裏打ちされた富裕層による活発な消費行動が見られる。
しかし、その対極では、長引く物価高に賃金上昇が追いつかず、実質賃金が低迷し続ける中で、日々の生活防衛に汲々とする労働者層の姿がある。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」 を見ても、1世帯当たりの所得の平均値(536万円)に対して中央値(410万円)は大きく下回っており、一部の富裕層が全体の平均を強く上へ引き上げている実態が伺える。
経済の「温度差」は、もはや単なる格差の問題にとどまらず、われわれが経済の健全性を測るための「物差し」であるマクロ経済統計そのものを歪めているのではないか。
物価統計のバイアスが実質GDP成長率を歪ませる
以前のコラムでは、資産家層の消費が強まる一方で労働者層の消費が抑制される状況下で、消費者物価指数(CPI)に下方バイアスがかかり、それが結果として日本銀行の金融緩和を不必要に長期化させ、そのこと自体が資産価格を押し上げ、K字型経済がさらに進むというリスクを指摘した。
今回のコラムでは、この議論をさらに一歩進め、物価統計の歪みが「実質GDP成長率」という国家の成績表をも歪めている可能性について論じたい。
結論から言えば、現在のK字型経済の下では、実質GDPは実態よりも「過大評価」されているおそれがある。
なぜ物価統計にバイアスが生じると筆者が考えるのか。
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