私が覚えた「背徳感」は、「誰かにオタクだと思われたらどうしよう」という不安だったのだろうか。しかし、この感覚には、得体の知れない暗さがあるように思えた。
なぜ、「美少女系アニメ」に不安を覚えるのか。この謎を解明するために、「オタク」の歴史を遡って検証してみた。
オタクの語源と“黒歴史”
「おたく」という言葉は、ロリコン漫画誌の草分けである『漫画ブリッコ』にて、83年にライターの中森明夫氏が生み出した言葉だ。コミックマーケットに集まるアニメファンがお互いを「お宅」と呼び合っている現象を揶揄し、そのカテゴリーに属する人々を「おたく」と分類した。
決してポジティブな背景ではないが、今でいう「陰キャ」と同程度のポップなディスりではある。その後、単語が浸透するにつれ、「オタク」と表記を変えてカテゴリー化されていく。
95年には『新世紀エヴァンゲリオン』が社会現象化。メイド喫茶、地下アイドルなどの出現とあいまって、オタクの「消費者」としての価値が注目され始めた。
2010年代からは「クールジャパン」政策として国家戦略に組み入れられて海外にも波及。現在のオタクは、自己表現やアイデンティティの文脈で語られるようになっている。
本来無害であるはずの「おたく」に、得体のしれない恐ろしさを植え付けたのは、1989年に発生した東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件だといわれている。
幼い女の子を誘拐して殺害、遺骨を家族に送り付けるという前代未聞の犯罪を引き起こした被告人。その自宅からは、大量の美少女アニメのビデオテープや漫画が見つかった。それを当時のマスコミがセンセーショナルに報道したことにより、サブカルチャー全体への偏見が一気に広まったのだ。
私が『怪盗セイント・テール』を見て覚えた後ろめたさや罪悪感、背徳感は、こうした幼いころに強烈に植え付けられた報道の記憶と、結びついているのかもしれない。
頭にこびりついたこの偏見を払拭し、できることなら私も『怪盗セイント・テール』で胸キュンしたい。それにはまず、論拠を探さなければならない。
オタクを正しく理解すべく、国会図書館で関連書籍を探すことにした。
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【「おたく」の特徴は】
