家風呂にはなくて、銭湯にあるもの。それを守り続けるために、なにが必要なのだろうか。
言うは易し、実行するのは難しい「温故知新」
「『古き良き』を残しつつ、プラスアルファをしていかないと。じいちゃんの『清潔・きれいは基本』という教えをしっかり守りつつ、新しいことを取り入れて現代風に変えていくという方針でやってます」
温故知新という言葉がある。言うのは簡単だが、実行するのは難しい。
取材中、印象に残った場面がある。通常より早い時間に暖簾をかけていたためか、窓の外からお客さんがそっと店内の様子をうかがっていた。それに気づいた亮三さんはすぐに窓を開けて、「まだなんですよ。ごめんなさい」と声をかけた。
するとお客さんは笑って立ち去った。まるで隣の家に声をかけるような距離感だった。
数々の困難に体当たりで立ち向かう亮三さんを支えているのは、銭湯への愛情と、歴史をつないできた家族へのリスペクトだろう。だが、寿湯が人を惹きつけ続けている本当の理由は、あの窓越しのやり取りに詰まっている気がした。
