トンカツと同じく人気メニューだったのがカツサンドである。女将はこれを復活させた。パンは食パンで、サンドウィッチ用の薄いタイプ。それを軽くトーストしてバターとからしを塗る。挟む具材はソースで炒めたザク切りのキャベツと、ソースがたっぷりからまったトンカツ。
端をカットして綺麗な長方形に整えたら、4つ切りにして箱につめる。パンにソースが染み込み、歯応えが少しだけ残った“くたしゃき”のキャベツと、柔らかい肉の旨みがじゅわっとしみ出るトンカツ……。ボリュームはあるが、ソースがあっさりしているので、一人前をぺろりと食べられる。
ぜひ味わっていただきたいが、最近では、店のオープン前にすでに予約完売ということもある。営業日は、月のうち5、6日程度で、曜日や日にちは決まっていない。営業日は店に張り紙をしているほか、Instagramでも告知しているので確認してほしい。
藤元の「おぼろ」がなければちらし寿司は作らない
筆者の母の得意料理に「ちらし寿司」がある。細切りにしたにんじん、椎茸を甘辛く煮て、酢飯にからめる。その上に絹さや、レンコン、エビを飾るオーソドックスなものだが、具材に藤元の「おぼろ」がたっぷり入っている。
おぼろとは、白身の魚を茹でた後、身をほぐして味をつけ、いり煮にした食べものだ。藤元は、熱海市役所の近くにある、創業が江戸時代末期の鮮魚店である。母が愛してやまないこの店のおぼろは、魚の身を醤油、酒、砂糖で煮詰めて作る、素朴な味わい。しょっぱすぎず甘すぎない。尖った主張がないので、ほかの素材を邪魔することなく、でもほどよい主張がある。
以前、おぼろを入れないでちらし寿司が食卓に出たときは、味がぼやけていて不評だった。以来母は、藤元におぼろが売られていない日はちらし寿司を作らなくなった。それぐらい藤元のおぼろは、母のちらし寿司には欠かせないのだ。
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【宿が高いなら、商店の安旨ホテル飯で】
