「当時は建築関係のお客さんが多かったみたいで、たくさん食べていただけるよう、価格もできるだけ安く提供していました。11時くらいまで店をやっていたので、それから片付けをしたり、従業員を食事に連れて行ったりして、帰宅するのは深夜の2時頃。翌朝4時には、仕入れに出かける。両親がほとんど寝ないで働いている姿をよく覚えています」
回転焼肉を他の店が真似できない理由
一時北海道の焼肉店が同じようなシステムを導入していたそうだが、結局は続かず、今はなくなってしまっている。
「海外からも視察に来た方がいましたが、私の知るところでは実現していないみたいです」
それほど回転焼肉は参入する、そして続ける障壁が高い。そのため、一升びんでも回転焼肉を楽しめるのは宮町店だけだったが、2021年に愛知県名古屋市に「回転焼肉 一升びん 名古屋則武新町店」がオープンした。名古屋駅から歩いて15分弱ということもあり、国内外の観光客が多く訪れている。
「名古屋則武新町店のレーンは、一度開発しているので、もう少し安くできました」と笑うが、それでも1000万以上はかかっているという。
元祖の宮町店も2023年にレーンをパワーアップ。回転レーンの上に、淺井さんが「新幹線」と呼ぶ「特急レーン」が設置された。タブレットで、レーンにない肉やご飯・冷麺などを注文できる。特急レーンをどんぶりが運ばれていく様子はなんともシュールだが、回転レーンで肉を選ぶ楽しさを残しながら、効率も追求できる。
「一升びん」という店名には「円卓の真ん中に一升瓶を置いて、それを囲んでみんなでわいわいと食事を楽しむようなお店にしたい」「家族や従業員が『一生』食べ物に困らないように」という初代の願いが込められている。その思いは回転するレーンという円に形を変え、今も生き続けている。
誰もがワクワクしながら、自分の意志で美味しいものを選べる豊かさ。その幸せこそ、淺井さんが「大衆的」と呼ぶものだ。
