カメラがユーザーの位置に合わせ、キーボードが周囲の環境に合わせる。この「PCがあなたに合わせる」という思想を、塚本氏は1台のPCの外にまで広げようとしている。
1台のPCから、複数デバイスの「ハブ」へ
ThinkPadの次の挑戦は何か。塚本氏が描くのは「1パーソナルAI、マルチプルデバイス」という構想だ。
スマートフォン、スマートウォッチ、ビデオ会議システム。1人のユーザーが使うデバイスは増え続けている。それぞれのデバイスがユーザーに関する情報を個別に持っているが、今はまだバラバラだ。これらの情報をAIが統合し、ユーザーの状況を理解したうえで一貫したサービスを提供する。その中心にPCが位置するという構想だ。
レノボは今年1月、パーソナルAIエージェント「Qira」(キラ)を発表している。PC、スマホ、スマートウォッチなど複数デバイスを横断して動作するエージェントで、レノボのアジア太平洋地域プレジデントであるアマール・バブ氏は「1つのパーソナルAI、複数のデバイスというビジョンが実現する」と語っていた。塚本氏が語るハブ構想を、ソフトウェアとして具現化したのがQiraだ。
ただし、塚本氏自身も「まだ取りかかり中」と認めているように、構想の実現はこれからだ。大和研究所では各チップベンダーと連携し、ローカルで動くAIモデルのチューニングや、日本語に特化したAIモデルの最適化に取り組んでいるが、ユーザーが恩恵を実感できる段階にはまだ距離がある。
34年間、ThinkPadは「お客様の生産性向上」という一つの軸を変えずに進化してきた。コンピューティングツールからコミュニケーションツールへ、そしてAI時代のデバイスハブへ。PCの役割が変わるたびに、ThinkPadは中身の設計を作り変えてきた。0.5ミリの薄型化よりも、壊れた端子を1つだけ交換できることのほうがユーザーの役に立つ。2026年モデルのスペースフレームはその判断の結果だが、次のAI構想が同じように形になるかどうかは、まだ見えていない。
