ふと振り返ると、大きなピザ窯が目に入る。その前で、ひとりのスタッフが機敏に手を動かすのが見えた。
注文が入ると、生地を手際よく広げ、トマトソースを塗り、チーズを振る。そして薪窯に入れ、わずか2分ほどで焼きあげる。無駄のない動きとリズム感があった。話を聞きたいとお願いすると従業員の久保仁さんは、気さくに応じてくれた。
もともと飲食や菓子、イタリアンの経験を積んできたという久保さんにとって、ここは「今までの自分を活かせる場所」だという。
「ピザの大会にも、会社のサポートで自己負担なく出られるんですよ」と、にこやかに話す。
その姿から、マニュアルに従って動いているというよりも、自分の仕事としてこの場をつくっている感覚が自然と伝わってきた。
こうした一人ひとりのあり方が、店の空気をつくっているのだと感じた。
良い店とは何か
取材終わり、安藤さんに改めて「良い店」とは何かを尋ねた。
「誰もが『食』からエネルギーをもらい、また明日への希望を感じられる店です」
客だけではない。そこで働くスタッフや、食材を支える取引先、店の周囲にいる人たちも含めて、「この店があってよかった」「ここに来ると元気になる」と思えること。店に関わるすべての人にとって、意味のある存在であることが「良い店」の条件だという。
一方で、社会は常に変わり続けている。人の好みや働き方、法規制、物価……。だからこそ、その変化をきちんと捉えながら、組織や仕組みは柔軟に変えていきたいと話した。
「変えてはいけないもの」と「変えていくべきもの」、その両方を見極めながら、バルニバービは立地に根ざした店づくりを続けてきた。
バッドロケーションから始まり、街ごとつくる不動産戦略へ。そして現場で働く一人ひとりの主体性へ。バルニバービの強さの源は、数値やマニュアルではなく、場所と人を見極める眼差しだった。
「社会から、この会社が存在する価値があると思われる。そこを目指しています」
