近年では、兵庫県の淡路島や島根県出雲市などでもエリア開発に関わる。レストランや宿泊施設を軸に人の流れを生み出す手法は共通しているが、その本質は単なる出店ではない。店をつくるのではなく、人が集まる“理由”をつくるということだ。
バルニバービの取り組みは今、個人店の成功から一歩進み、「街そのものをどう設計するか」というフェーズへと移りつつある。
場所の価値を、自らつくる――31年続く理由
取材を通じて、冒頭の問いに対する答えが見えてきた。
――なぜ、人通りの少ない大津駅に出店したのか。
それは、立地に依存しない店づくりを徹底してきたからであり、「場所そのものの価値を自らつくる」という発想に立っているからだ。さらに現在は、その価値をより確実に自社の成長へとつなげるため、不動産という領域にも踏み込んでいる。
さらにもう一つ、見逃してはいけない点があると安藤さんは言う。それは、「どんな街に店をつくりたいのか」という視点だ。
創業者・佐藤会長は、かつて大津駅周辺についてこんな趣旨のことを語っている。
「商店街の店先で、おばあちゃんたちがご飯を持ち寄って笑い合っている。その光景を見たとき、いい街だなと思ったんです。そんな場所に、人が集まる店をつくりたい」
創業者のこの言葉は、安藤さんをはじめ、バルニバービが会社設立から35年間一貫して守ってきた姿勢そのものだ。立地条件や数値だけでは測れない、「人が前向きに過ごせる空気」を見極め、"場所の価値"ごと育てていく。ときに見極めが外れることがあっても、その姿勢をなくさない。だからこそ、バルニバービの拡大は今も続いているのだ。
では、その姿勢を現場で体現しているのは、いったい誰なのか。後編では、店づくりを支える「人」の仕組みに迫る。
