現在では、丸の内のオフィス街において多くの人が集まる人気店となり、単なる飲食店にとどまらず、「人を呼び込む役割」に変わってきている。
しかし人が集まることで、バルニバービへのデメリットも生じてしまうという。
「人気になると地価が上がるんです。そうすると、今までの家賃より大幅な値上げが行われ、支払いが難しくなり、出ていかなければなりません」
つまり、自分たちが価値を高めた場所から、結果的に退出を迫られるという構造が生まれてしまったのだ。
「5、6年経った不動産って桁違いに上がって。もともと8億と言われていた物件が32億になったことも……」
「バッドロケーション戦略」の副作用とでもいうのか。この構造は、同社にとって大きな課題となった。
「街ごとつくる」戦略へ
この解決策として、2021年にバルニバービが打ち出したのが「取得可能な不動産は自ら保有する」という方針だ。安藤さんはこう語る。
「これまではテナントとして借りる立場でしたが、自分たちがそのエリアの価値を高めるのであれば、その価値も自ら享受していくべきだと考えました。20年、30年と続く事業にするために、不動産領域にも踏み出しています」
海外では珍しくない手法だという。たとえば未開発だった土地にホテルやリゾートを誘致し、人の流れを生み出すことで地価を押し上げていく。バルニバービも同様に、「飲食」と「不動産」を掛け合わせることで、収益構造そのものを変えてきた。
取り組みが進むにつれ、ディベロッパーだけでなく、行政からも声がかかるようになった。
なぜなら、人口減少に直面する地方自治体にとって、飲食や宿泊は人を呼び込む重要な役割になる。一方でバルニバービにとっても、安価で土地を取得し、長期的な視点で活用できる環境は好都合だ。両者の利害は一致し、地域の価値をともに高める関係が生まれている。
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【フェーズは「街そのものをどう設計するか」へ】
