「帰ってきたくなる場所」になる、ということ
青木さんは、空き部屋が出たことを入居者に伝えることがある。須田さんも、現在アトリエにしている部屋が空いた際に、青木さんから勧められ借りることにした。普段のコミュニケーションの中で、入居者の状況や好みを把握しているからできることだろう。
入居者は、空き部屋を気軽に見学することもできる。“今度◯号室の人が出るよ” “じゃあ見せてください”といったやり取りも、日常の中で交わされている。
また、このアパートには、一度離れても戻ってくる人が少なくない。
「『ほかではダメでした』って、帰ってきてくれる人がいるんですよ」
青木さんは、嬉しそうにそう話す。
その代表例が須田さんで、最初の入居から15年の間に仕事の海外研修で一度離れながらも、再びこの場所に戻り、現在は2部屋を借りている。
空間の自由度、家賃の手ごろさ、立地の良さ。理由はいくつも挙げられるが、それだけでは説明しきれない引力が、ここにはある。
それは、人の営みを面白がり、背中を押し、ときに見守る存在がいること。部屋を貸すというよりも、人が過ごす時間を支える。そんなオーナーの姿勢が、結果として場所の魅力を強くしているように見える。
このアパートに集まる人たちは、まずは空間に惹かれ、人と触れ合うにつれ、安心できる居場所として深く根を下ろしていく。青木さんがつくっているのは、単なる賃貸住宅ではない。「楽しく暮らす」ことを中心に据えた、小さなコミュニティそのもの。
それが、唯一無二のアパートとして多くの人から愛され、長く住み継がれる所以なのだろう。
取材・文/松川絵里
美大生のための伝説のアパート、DIYし放題で“住み継ぐ”
多摩美術大学 油絵学科専攻 Iさんの部屋
医師 兼 画家・詩人・シンガーソングライター 須田さんの部屋
アクセサリーデザイナー suieさんの部屋
美術作家(多摩美術大学 油絵専攻卒) 山本武蔵さんの部屋
アップルアンドサムシングエルス
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