「すみません、僕、壁を叩いたことがあって」
「いいんですよ、かえってすみません」
そんなやり取りをきっかけに、制作の背景を知り、互いの理解が深まっていく。ここではトラブルさえも関係性を育てる契機になりうる。
DIYを“煽る”。オーナーはプロデューサー的存在
オーナーの青木さん自身、インテリアや建築への関心が高く、アパート建築中は、海外からタイルなどの建材を取り寄せたり、猫脚のバスタブを導入したりと意欲的に取り組んだ。
現在も、空き部屋が出るとDIYリフォームを楽しんでおり、自宅の倉庫には丸鋸(まるのこ)などの本格的なものを含んだ工具や、ペンキなどの材料が一式そろっている。そして、住人は自由にそれらを使うことができるのだという。
青木さんは自分で手を動かす一方で、住人が行う個性的なリフォームで、アパートが色づいていく様子も面白がっているようだ。須田さんはそれを象徴するような話を聞かせてくれた。
「(リフォームを)『やれやれ』って、煽ってくるんですよ。それで、できが良ければ褒めてくれるし、良くなければ直すようにも言われます(笑)」
「壁に絵を描いたり、塗ったりするのも、いたずらじゃなくて“作品”として捉えているんです」と青木さん。
ただ自由に任せるのではなく、審美眼を持って見守る。須田さんいわく、「ある意味プロデューサーのような存在」。その視点があるからこそ、無秩序ではない独自のまとまりが生まれる。
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【アパートを一度離れてから戻ってくる人も】
