カード会社は金額の大きい死亡時の保険金を前面に出すが、実際に重要なのは、海外で入院したり手術を受けた際に受けられるサポートである。
クレカの保険の治療費は50万円〜300万円が多い。海外旅行保険が付帯されているクレカを複数持っていれば、治療費などの補償額を合算できる。
筆者の例からわかるように、中国や東南アジアは200万円以上の枠があればおおむねカバーできそうだが、医療費が高額な国では心もとない。アメリカ在住の友人は、先日MRI検査をしたところ、それだけで100万円を超える請求書が来たそうだ。
筆者と息子は大病院がある大都市で事故に遭ったので、手術が必要なケガでも迅速に処置を受けられた。田舎で大きな病気やケガをすると、搬送費がかかったりして、アジアでも高額になることもある。
「クレカの保険だとサービスの質が落ちる」との説もあるが、中国で医療通訳を派遣してくれた会社は、筆者が保有するクレカの保険だけでなく、日本の大手損保の現地代理店業務も行っていた。担当者は「保険の内容によって対応範囲は変わるが、クレカの保険だからと質が落ちることはない」と話していた。
世界一周旅行前に、急病や事故を想定したリスク対処はやったつもりだった。しかし事故を経験して「準備が足りていなかった」と気づいたこともあった。以下は、筆者自身が事故をきっかけに見直したことだ。
①家族のクレカ見直し
クレジットカードに付帯する海外旅行保険は、持っているだけで保険の対象になる「自動付帯」と、航空券やツアー代金をクレカで決済しないと対象にならない「利用付帯」がある。
筆者は自動付帯のカードを2枚所有しており、息子の家族カードも自動付帯だった。自動付帯のありがたさが身に染みて、両親のクレカも低額の年会費で自動付帯の保険がついているカードに切り替えた。が、今年3月末にルールが変わり「利用付帯」に“改悪”されてしまった。
最近はクレカのルール変更が相次いでいるので、旅行前に保険内容をしっかり確認してほしい。自動付帯の海外旅行保険がついているクレカの年会費は1万円以上することが多いが、海外旅行が多い人には合理的な選択と言える。
②保険会社への連絡体制整備
保険に入っていたとしても、保険会社と連絡がつかなければ病院によっては治療をしてもらえないし、キャッシュレスサービスも利用できない。筆者の例からわかるように、後から保険金が支払われるとしても自己負担は何かと面倒だ。
自身が保険のサポートデスクの連絡先を把握しておくのはもちろん、緊急時に連絡が行きそうな人にも、加入している保険とその内容を伝えておく必要がある。息子は自身が入っている保険に無頓着だったが(大学で加入していた傷害保険は契約書も残していなかった)、学校職員や親が把握していたので何とかなった。
③緊急連絡人の吟味
筆者は世界一周旅行でパスポートのコピーを持ち歩いていたが、緊急連絡先をわかりやすいところに表示していなかった。息子の事故を機に、パスポートとスマホに英語で作成した緊急連絡先カードを挟んだ。
カードには名前、生年月日、国籍、パスポート番号、そして英語+2言語の計3言語が話せる3人の名前と電話番号を記載している。
日本の旅行会社を通じて申し込んだ海外旅行なら、日本語で連絡が来る可能性が高いが、個人旅行の場合は外国語で電話がかかってくることも考えられる。少なくとも英語がわかって、非常事態でも落ち着いて対応できる人を緊急連絡人にしておかないと、パニックの連鎖になりかねない。
④通信環境の確認
海外から保険サポートデスクにつながる手段を確保しておきたい。日本のキャリアの海外ローミングだとフリーダイヤルにつながらないこともある。一方、保険会社によってはLINEで連絡できるケースもある。
事故はいつどこで発生するかわからない
筆者は海外経験がそれなりにあるが、40代までは海外で病院の世話になることは一度もなかった。それが最近立て続けに、家族で事故に遭い救急車で運ばれた。
事故とは、いつどこで発生するか予想がつかないから事故なのだと思い知った。意を決して始めた留学は、わずか10日あまりで休学を余儀なくされたが、折れたのが利き手でなかった幸運に感謝しながらこの原稿を書いている。
