階段を上がった先のベランダには、大きなプラスチック製のボックスが置いてあった。組み立て式の簡易浴室で、中にはシャワーと小さな浴槽が収まっている。当初は風呂がなかったが、後から浴室をベランダに増設したのだ。
二見氏によると、かつて銭湯通いが前提だった時代の名残りで、関西特有の文化住宅(主に1950~60年の高度経済成長期にかけて流行した木造モルタル2階建ての集合住宅)には、こうした風呂なしの間取りが珍しくなかった。
ただ、ベランダに外付け浴室がついている物件はなかなかない。若いスタッフたちにとっては初めての光景だった。
この現場の撤去費用は、「正直に言うと30万円ほどになる」と二見氏は話す。決して安くない金額だが、3軒6部屋の全撤去としてはむしろ抑えているほうだという。その背景には、ゴミ処理をめぐる業界全体のコスト構造の変化がある。
ゴミは減っているのに、処理費用は上がっている
環境省が行った「一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和6年度)」によると、ゴミの総排出量は前年度比2.2%減の3811万トン。10年前の2015年度と比べると、13.7%も減っている。にもかかわらず、ゴミ処理事業にかかる経費は前年度比6.9%増の2兆4489億円に上った。
つまり、ゴミは減っているのに、処理にかかるコストは増え続けているのだ。
現場の実感も変わらない。二見氏は「ゴミの処理代は昔に比べたら体感で3倍以上」と話す。要因はひとつではない。
「まず、燃料・エネルギーコストの上昇です。パッカー車(ゴミを積載・圧縮して運搬する特種用途自動車)のガソリン代はもちろん、焼却施設で使う電気代やガス代も増えています」(二見氏、以下同)
次ページが続きます:
【最終処分場の新たな確保や維持に多額のコストがかかる】
