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「幸福な王子」の話をご存じであろう。ある町できらびやかな宝石に彩られた豪華な王子像が建立された。像には生前の王子の心が宿り、高台から見えてしまう市井の貧しい人々を助けるため、次々と宝石や金をツバメに剥がさせては差し出す、あの話だ。日本のこれまでの再生資源に関する立ち位置は、自由貿易の信念の下、戦略なく振る舞ってしまった点で「幸福な王子」に重なる。それがこれから変化するかもしれない。
資源の獲得競争が激化
4月21日、政府は金属やプラスチックなどの資源を再利用する循環経済に関する行動計画を決定した。足元では原油確保に目が行くかもしれないが、同様に資源も獲得競争が激化していることに焦点を当てた重要な施策だ。都市鉱山からのレアメタルを製錬して再利用する技術の開発、鉄スクラップや永久磁石などの回収といった選別循環型経済の実装に向けて進んでいくものだ。日本は資源が乏しいものの、ごみの分別回収などで国民の意識は比較的高く、製錬などを含めた技術にも富む。これらは今後の日本の競争力の源泉となりうるものだ。
そのための経済的支援スキームとして、2030年までに官民で1兆円投資を目指すことが明記された。26年度当初予算で経済産業省が「重要鉱物に係るサプライチェーン強靭化事業」として50億円を要求したのと比較すると、1兆円は大きな数字に見える。大きければいいわけではないが、妥当な必要額を算出して投下し、まずは循環型経済の進捗を促すことが肝要だ。
国の計画はとかく総花的で、あれもこれもと詰め込んでしまうため何が重要か見失いがちだが、今般の計画では重要鉱物、金属資源などの経済安全保障の文脈で「再生資源供給サプライチェーンの強靭化」を図ることが大事だと押し出されている。しかも30年までの再生材供給の目標値を具体的に設定し、鉄、アルミ、銅、永久磁石の3割以上を再生材として確保するとしている。EU(欧州連合)が導入する新ELV(使用済み車両)規則でも自動車に使うプラスチックの再生材利用義務化が決まっている。導入5年後に15%、10年後には25%を要求するもので、これと平仄(ひょうそく)が合う。
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【再生材への新たな手立て】
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