4カ月足らず前、バンク・オブ・アメリカの最高経営責任者(CEO)ブライアン・モイニハンはテレビのインタビューで、AIが人間の仕事を置き換える可能性について、自社の21万人の従業員には次のように伝えたいと話していた。
「心配には及ばない。(AIは)雇用の脅威ではない」
ところが4月中旬、バンク・オブ・アメリカが第1四半期(1〜3月)決算で86億ドル(約1.4兆円)の純利益(前年同期比17%増)を記録すると、モイニハンの口調は変わった。
この利益は、自然減で1000人の人員を減らしたことにも支えられており、そうした自然減は「仕事をなくし、技術を導入する」ことで可能になったと述べた。その「技術」とはAIだとモイニハンは繰り返し明言し、こうした人員削減は今後数カ月から数年でさらに進むと予言した。
「AIのおかげで私たちは、これまで進めなかった場所に進めるようになった」とモイニハンは語る。
「AIは人間の補助にすぎない」は数カ月で崩壊
「人間の仕事を置き換えるのではなく拡張するのがAI」というウォール街のこれまでの表向きの立場は、直近の決算が示しているように急速に崩れつつある。
JPモルガン・チェース、シティ、バンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、ウェルズ・ファーゴの6社が第1四半期に上げた利益は合計で470億ドルと18%の増益を記録する一方、従業員数は1万5000人も削られた。
各社はいずれも、いわゆるバックオフィスからフロントオフィスに至るまで、雇用削減や業務の自動化にAIが一定程度寄与したとしている。バックオフィスでは、多くの従業員がさまざまな法律や規制に対応するための書類処理を担い、フロントオフィスでは年収100万ドル(約1.6億円)台の専門職が法人顧客向けに複雑な金融取引を組成している。
金融界では、シリコンバレーと違い、AIで雇用が減るとあからさまに語る企業幹部はほとんどいない。
例えばシティは、2万人の人員削減を進める方針を示しているが、ある幹部は金融アナリストに対し、「生産性と効率性の向上の進展」を通じてそれを行うと表現した。
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【AI利用を促す立場の従業員もリストラ対象に】
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