日本でも『畏(おそ)れ慄(おのの)いて』が訳されている作家のアメリー・ノートンにインタヴューをしたとき、彼女はエキセントリックなシルクハットを被り、少しくたびれたツイードのジャケットを着て、颯爽と取材場所にやってきました。
「これはね、お祖父様が着ていたものなの。この背広は私の一番の宝物なのよ」そう言っていたのです。
ベルギーで生まれ、パリで活躍する作家。父が外交官で日本にベルギー大使として赴任したため、一時は日本に住んでいたこともある。『恐れ慄いて』など、日本で翻訳されている著書も多数。毎年9月になると書き下ろしの小説を発表し、それが必ずベストセラーになるという伝説の持ち主。
ティファニーやカルティエの華やかさとは違いますが、パリジェンヌたちには家族代々受け継いできたものを大事にして、エレガントに身につけるセンスが根本にあるようです。
まっさらの下ろしたてものではなく、どこかにオーセンティックなものを身につけることで深みを持たせるというのが、パリのエレガンスの流儀のような気がします。
魅力的なドレスがパーティーの主役にしてくれる
印象に残っているドレスといえば、ヴァネッサ・パラディの淡いブルーのサリードレスですね。
パリで新しいモードの動きをキャッチして、東京に伝えるのが役目だった私は、ファッションアイコンのヴァネッサがどのようなものを着ているか、いつも注目していました。
1990年代の、たぶんシャネルのコレクション会場だったと思います。彼女はターコイズ・ブルー(記憶の中では)の、もしかしたら未完成かもしれないと思えるようなドレス姿で、天女のようなオーラに包まれてふわりとやってきたのです。
小柄で華奢なシルエットのヴァネッサですが、その日は既成のドレスではなく、どうやら2枚のサリーの布を巧みに体に巻きつけて、ミモレ丈のドレスにしていたようです。
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【シャルロット・ゲンズブールの着こなし】
