あるとき東京で、写真はピーター・リンドバーグ、モデルはナジャ・アウアマン、ヘアはオディール・ジルベール、メイクはステファン・マレという、当時のパリでは夢の顔ぶれで撮影をしたことがあります。その夕食の際に、私はポワレのネックレスを着けて出かけました。
それを見たオディールもどうやら一目惚れしたようで、装飾を撫でまわして大はしゃぎ。別れ際には、「今晩気をつけてよ。夜中に私があなたの部屋に忍び込んで、ポワレを盗んじゃうから、覚悟して!」と笑いながら言っていたのを、思い出します。
どんなものでもいいのです。この世に唯一無二の、自分だけのものを持つということは、物質を超えた精神的な宝物になるのではないでしょうか。それを巡って、色々な思い出も生まれます。
家族の歴史を身に纏(まと)う
「なんといっても真冬のホワイトジーンズは、最高だよ」
世紀の天才デザイナーといわれ、現在もルイ・ヴィトンのアーティスティック・ディレクターとして世界のファッション・ピープルに支持されているニコラ・ジェスキエールは、極寒の中での白ジーンズの魅力を熱く語ってくれました。
1995年からバレンシアガのコレクションを手掛け、その独創性が高く評価されたファッションデザイナー。現在はルイ・ヴィトンのアーティスティック・ディレクターを務める。世界のファッション誌の編集者たちを独自の斬新なデザインで今も魅了し続けている。
エレガンスというのは、各自の美意識によって、あるいはそれぞれの国によっても異なるので一概には言えませんけれど、パリのおしゃれな人は、季節やその日の天候や光にも配慮して、服選びをしているように見えました。
知り合いのお嬢さんで、時々モデルを頼まれるほど綺麗でセンスのいいマリィは、「雨の日には、私、白は着ないわ。絶対にだめよ」と言っています。濡れたり汚れたりするからというより、雨の日の風景に合わないというのです。
「眩しい日差しの日は、白シャツに限る」
「雲の多い日は、グレイのTシャツね」
マリィによれば、光によって、映える色が全然違うというのです。自分の中でおしゃれのルールがはっきりとしていました。
あるときパリで、「あなたの大事なジュエリーを見せてください」というテーマで日本の女性ファッション誌の取材をしたことがあります。
そのときに気づいたのは、多くのパリジェンヌは自分の母親や、祖母、叔母からもらったジュエリーを、肌身離さず上手に身につけているということでした。
祖母の遺品だというパールのネックレスを、ラコステの白のポロシャツの襟を立てて、その上から首にかけ、素敵なスタイリングをしていた若い女性もいました。
また、母親にもらったという婚約指輪のダイヤを、ディズニー風のブローチに作り変え、今の時代に合うようにリメイクしている人もいたのです。
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【家族代々受け継いできたものを大事に】
