多様な視点から判断する必要がある
──本書序盤で、「一極集中」の現象は、実は全国で起こっていると示されています。
一極集中という言葉は東京と結び付きやすいし、メディアの報道では、「東京一極集中は問題だ」という前提で話が進む。だが俯瞰すると、日本全体、広域地域、都道府県の各レベルで一極集中は観察される。例えば、九州地方なら福岡県へ、大分県なら県庁所在地の大分市への転入超過といった具合いだ。
では、「例外的な現象」とはいえない東京への転入超過は、本当に問題なのか。多様な視点から判断する必要があるのではないか。
──「東京一極集中」を批判する根拠はあいまいなのですね。
確かに人口流出は地域の衰退につながる。だが、人口流出に悩む自治体にとって影響が大きいのは、東京よりむしろ近隣の中心都市への転出というケースもある。
人口が流入する都市には、混雑というデメリットが生じる。同時に、規模の経済や資源の共同利用が生じるほか、取引相手が多数存在することによる適材適所やリスク分散といったメリットもある。
これらを複合的に捉える必要があるはずだが、東京一極集中というテーマにおいては、マイナス面が過度に強調されてきた。地方が一丸となるために、東京が悪者にされすぎているようにも感じる。
そもそも、人が移動すること、特定の地域に集まっていくことには理由がある。それにより意図せざる効果が生じることもある。そうした「都市集積のメカニズム」を分析してきたのが都市経済学だ。
──戦前の日本の人口移動に関する研究では、「家父長制等の非経済的要因によって農村人口が維持され、都市部への人口移動が抑制されたことが、経済成長の阻害要因になった」と。
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