「住み続けるにしても、現在の家に危険はないか。例えば階段や玄関の段差、トイレやお風呂など、手を加えたほうがよいところがあるかもしれません。
すぐに実家じまいに話題を持っていくのではなく、親が快適に暮らすにはどうすればよいかを家族で考えよう、というムードを作っていくと、話が進めやすくなることもあります」
「全部片付ける」が失敗を招く
これまでの2回の取材をふまえても、親の意思の確認と尊重は重要なキーワードだった。大井さんもこれにうなずく。さらに、子世代(きょうだい)間でのコミュニケーションも可能な限りとっておいてほしいと付け加える。
「きょうだい間で実家に対するスタンスの共有がなされていないと、いざ実家じまいというときに『自分は故郷に戻るつもりだった』など話がこじれる場合も。
前もって『将来的に実家をどうするか』をきょうだい同士で話しておくのは、意外と重要なポイントです。いまは親族でLINEグループなどを作っているおうちも増えているので、そうしたところでコミュニケーションをとりつつ、きょうだい間では最近の親の様子など思うところを共有しておくとよいでしょう」
さらに、きょうだい間では相続の問題もある。こうしたやりとりに向けても、日ごろのコミュニケーションをとれるようにしておくのがよさそうだ。
また、親の意思に加え、「実家じまいには時間がかかるものと心得てほしい」というアドバイスもあった。
「多くの人は、実家に関する悩みを早く解決したい! と、親にも早めの決断を求めたくなることもあるかもしれません。もちろん実家じまいは親が元気なうちにとりかかったほうがいいと思いますが、それは親の気持ちあってのもの。家族で過ごした思い入れのある自宅をどうするかを考えるときは、親の気持ちがどう動いているかをまず大切にしてほしいですね」
子世代としては、実家に眠るモノや家自体を処分して早く見通しをつけたいと思うこともある。
しかし、親にとっては家とともに自分自身の“人生のしまい方”に思いをはせる作業にもなる。よかれと思ってあれこれ意見したり、判断を急がせてしまうと、親の気持ちに寄り添えない結果になってしまうかもしれない。
「『今回の帰省で全てを片付けよう』と思いすぎないほうがよいでしょう。スムーズに短期間で進められることもあれば、数年がかりになることもあります。
でも、時間がかかるからこそ、親と思いを確認しあったり、思い出話をしたりする時間もとれます。今まで聞いたことのなかった親の思いを耳にすることもあるかもしれません。
親が実家を離れたくないのなら、『まずは安心・安全に暮らせる状態を整えて見守る』と決めるのも実家じまいの第一歩です。子どもがきっかけをつくることで、親も少しずつ実家のこれからを考えやすくなることがあります」
実家じまいは家の処分だけではなく、親と子が愛着のある家について考え、親が残りの人生をいかに心豊かに過ごせるかを見つめる時間なのかもしれない。すぐに実家をどうする、という考えにいたらなくとも、親が安全に暮らせる環境を整えながら一緒に考えていくのも、実家じまいのひとつの形だ。
まずは次の帰省で、親に「これからどんなふうに暮らしたいか」を聞いてみることから始めてみてはどうだろうか。
