大井さんの両親にとって特に大きかったのは「関東に住む子どもたちのそばで暮らしたい」という思いだった。息子(大井さんの弟)の家族には孫もおり、家族と会える機会が増えることも、関東への移住を後押しした理由のひとつだったという。
大井さん自身も、親が近くに住むことで、上京してからなかなか持てなかった“親子の時間”を取り戻せるかもしれないと感じ、両親の思いを受け止めながら実家じまいを進めていった。
「60代前半だから動けた」が示すこと
実家の売却から関東への移住までは、紆余曲折ありながらもおおむね順調に進んだという。当時を振り返ると一番心配だったのは、「両親の心変わり」だった。家も人間関係もある、生活の基盤だった場所を離れて新天地へ……。年齢を重ねるほどに、その不安やストレスは増すといっていいだろう。
「『やっぱり大変そうだし』と翻意するのではと心配していたのですが、ふたを開けてみれば、両親はテキパキと荷物の整理を済ませて移住に対しても前向きな気持ちをキープできているように見えました。その理由は、二人とも60代前半でまだ若く、気力があったからではと思っています」
実家じまいは老齢の人にとって重労働だ。もちろんモノの整理や移動は子世代がサポートできるが、気持ちだけは誰にもコントロールできない。そこで後ろ向きになってしまい「やっぱり引っ越しはやめておこう」と実家じまいを断念してしまうケースがあるのだという。
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【両親が健在のうちに実家じまいできるケースは多くない】
