「健康的に動ける体になったら、やりたいことがどんどん出てきたんです」
この体験が、後の発信活動の核心にもなっていく。
友人に勧められるままInstagramとTikTokを始め、ダイエットのビフォーアフターを投稿すると、思いもしなかった反応が起きる。動画が拡散され、再生回数が一気に伸びたのだ。
「当時70万回再生。すごいなと思いました」
同世代の女性から多くの声が届いた。
「更年期で気持ちが落ち込んでいた」
「もう人生終わりだと思っていたけど、頑張りたい」
わかりすぎるメッセージだ。
「だから、諦めたらいけないよっていう投稿を続けていたら……気づいたらフォロワーが増えていましたね」
この頃、山本さんはカメラの仕事も軌道に乗り、撮影会社を立ち上げる。カメラマンの男性スタッフを2人雇い、自身は営業やディレクションを担当する立場に回った。
「64歳で終活、70歳でフォロワー8.2万人」の大逆転
ところが、山本さんの新しい挑戦は、思わぬ形で止まることになる。コロナ禍に入ったのだ。撮影の仕事はほぼゼロに。その状態が約2年続いた。
「一人でそれなりに楽しくは過ごしていたんですけどね」
夫はすでに亡くなっている。子育ても終わり、経済的にも大きな不安はなかった。だからこそ、山本さんはある決断をした。
「64歳で、人生を畳む準備を始めました」
仕事を広げるのではなく、むしろ少しずつ整理していこう。“終わりの準備”のような気持ちだったという。
ところが、コロナが落ち着き始めると再び状況が変わる。補助金制度の影響もあり、「写真を撮ってほしい」という依頼が増えてきたのだ。久しぶりにカメラを手にし、撮影した写真を渡すと、依頼者が目を輝かせた。
「すごく喜んでくれたんです! 写真って、こんなに人を喜ばせるんだって」
その感触が、山本さんをまた動かした。
もう一度カメラを持つことに決め、再びSNSでの発信を本格化させると、フォロワーは伸び続けた。現在、Instagramのフォロワーは約5.2万人、TikTokは約8000人、Threads1.2万人、Facebook9000人に達している。
夫の死、80kgへの激太り、コロナ禍で事業継続の気力喪失。三度の「どん底」を経験してなお、山本さんは折れなかった。それどころか、そのたびに前より大きく動き出した。
どうも彼女には、「諦める」という選択肢が存在しないらしい。いったいなぜ心が折れないのか。後編では、波乱にも心折れない強さの秘訣と、70歳でバズを生む「引き算投稿術」について深掘りする。
