「東京でオフ会をやります」と呼びかければ、50人ほどの参加者がすぐに集まる。投稿されるショート動画は多いもので352万回再生。スクロールしてもさかのぼりきれないほどの投稿数。
節分前には、Amazonで購入した巨大な金髪アフロのカツラを被ってジムに登場し、若いインストラクターを吹き出させる動画を投稿した。
別の動画では、ショートパンツに派手なメガネ、程よく筋肉のついた健康的な脚でステップを踏みながらトレーニングをしている。ジム中に響く「あはは」という笑い声――エネルギーがそのまま伝わってくる。その姿は、「おばあちゃん」という言葉から思い浮かぶイメージとまったく一致しない。
しかし、取材の冒頭で山本さん自身が放った言葉は意外だった。
「私はずっとお茶くみで、会社からすぐ追い出される候補の人でした。夢も希望もなかったし……」
今の姿との落差に言葉を失った。山本さんはいつ、どこで変わったのか。そして70歳で「今が人生最高」と感じられるようになったのは、なぜなのか。
運転免許しかない。100万円貯めて次々と資格を取った理由
山本さんは、もともと人前に出るタイプだったという。高校時代は生徒会長を務め、バスケットボール部ではキャプテン。インターハイは3回出場した。だが昭和式の根性論で鍛え上げられた高校生活の末、燃え尽き症候群のような状態に陥ってしまう。大学受験の意欲も、将来の夢も思い浮かばず、母親に勧められるがまま神戸製鋼に就職した。
「夢もなかったし、特に仕事を頑張ろうとも思っていなかったですね」
入社5年後、24歳でラグビー選手として活躍していた同僚と結婚。
「イケメンで高学歴・高収入・高身長のいわゆる『3高』でしたね。母はすごく喜んでいました」と笑う。結婚後も27歳まで働いたが、夫の東京転勤を機に退職し、約10年の専業主婦生活に入った。
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【「東京は勉強できる場所がいっぱいあるよ、羨ましいな」】
