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イランのホルムズ海峡封鎖が長期化したら原油・LNG市場はどうなるか、日本の原油代替調達はどこまで可能か 

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ホルムズ海峡は事実上封鎖状態に陥っている(写真:ロイター/アフロ)

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ホルムズ海峡封鎖により、原油や天然ガスなど世界のエネルギー供給に深刻な影響が発生している。海峡封鎖はどれほどのインパクトがあるのか。また、日本の原油代替調達戦略に勝算はあるのか。国際エネルギー情勢に詳しい、日本エネルギー経済研究所の柳沢崇文研究主幹にインタビューした。

──イランによるホルムズ海峡封鎖は、世界経済に巨大なインパクトを与えました。

ホルムズ海峡経由での貿易量は、原油に関しては世界の貿易量の約3割 、液化天然ガス(LNG)でも約2割を占める。今般、こうした巨大な貿易の流れが途絶する事態となった。

これまで、ホルムズ海峡はエネルギー輸送における「チョークポイント」とみなされてきたが、現実に封鎖が実施される事態は、エネルギー関係者の間でも想定は難しかった。もしも封鎖された場合、世界経済に与える影響がきわめて大きいうえ、原油の輸出に頼るイランにとっても自分の首を絞めることになりかねないため、合理的とは言えないからだ。

イラン原油の多くは中国向けに輸出

──ホルムズ海峡は事実上封鎖され、原油やLNGタンカーの通行量は激減しました。このことによる湾岸諸国の原油、LNG生産や輸出へのインパクトはどのようなものでしょうか。

国際エネルギー機関(IEA)の発表によれば、中東における原油生産量は2026年3月に前月比で約40%減少した。そうした中で、唯一、ほぼ生産量が変わらなかったのがイランだ。イランの原油生産量は2026年2月に日量369万バレルだったものが、同3月も日量363万バレルとほぼ同水準を維持している。イランは戦争開始後の3月も日量185万バレルの原油を輸出したとみられる。

3月のホルムズ海峡の通航は、イランによる原油輸出およびイランが認めた中国やパキスタン、マレーシアなどの船数隻程度しか確認されなかった。イランの船の多くは中国に向けて原油を運んだと見られる。

──4月の状況はどうでしょうか。

4月12日に停戦協議が合意できずに終了すると、アメリカはホルムズ海峡の「逆封鎖」の挙に出た。アメリカはイランからの原油輸出を阻止すると表明している。両者が封鎖を断行したことにより、ホルムズ海峡はほぼ完全封鎖の状況になっている。4月の原油輸出にはこうした軍事行動の影響が生じる可能性がある。

柳沢崇文(やなぎさわ・たかふみ)  日本エネルギー経済研究所研究主幹 /2009年東京大学教養学部卒業、三井物産を経て、2021年5月に日本エネルギー経済研究所入所。2022年東京大学大学院博士(学術)。 専門分野は国際エネルギー情勢、日本の資源エネルギー政策。自著に『現代日本の資源外交─国家戦略としての「民間主導」の資源調達─』(2024年1月) (撮影:梅谷秀司)

──こうした中、日本を含む世界各国は危機感を強め、代替調達や備蓄の放出などに動き出しました。日本の状況についてご説明ください。

日本の2024年度の原油輸入は日量約235万バレル。うち、「ホルムズ海峡依存(比率)」は約223万バレル(約95%) に達する。すなわちホルムズ海峡が事実上封鎖されたことによる影響は甚大だ。

そうした中で日本はこれまでに国内消費量の約70日分相当の備蓄(国家備蓄、民間備蓄および産油国共同備蓄)の放出に踏み切った。 他方で、日本政府や石油元売り会社などは、ホルムズ海峡経由の原油の「代替調達」に全力を挙げている。

政府によれば、原油の年間消費量である日量約236万バレル(2025年実績)に対して、4月調達分では代替調達は全体の2割以上にとどまる一方、5月調達分については国内消費量のうちの過半を中東およびアメリカを中心とした代替調達により確保できる見通しだとしている。特に中東からの代替調達が進展することが主因だ。

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【ホルムズ海峡迂回ルートは大きく2つ】

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