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ハンガリー・オルバン政権大敗で欧州ポピュリズムの潮目は変わったのか/新興保守の勝利で社会民主主義勢力弱体が続く

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ハンガリー総選挙でオルバン首相を破り、政権交代を果たしたマジャール新首相(写真:2026 Bloomberg Finance LP)
  • 安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)
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一方、右派オルバーン政権内では、地縁血縁による独占や腐敗が進み、今回は独裁政権と批判されたオルバーン政権は支持を失った。ただ、伝統保守の担い手が敗北した一方、伝統的価値観を目の敵にする左派リベラルが勝利したわけではない。ハンガリー選挙が欧州に与えた影響を理解する必要がある。

選挙で勝利したマジャル氏は親欧州派だが、この保守派は16年間同国を統治したオルバーン首相と多くの点で共通点を持つ。

ティサ党のマジャル党首は、オルバーン体制を「一つずつ」解体すると約束しているものの、わずか4年前まではオルバーン氏のフィデス党員だった。当時の妻、ジュディット・ヴァルガ氏は、2019年から23年までオルバーン政権下で法務大臣を務めていた。2人は23年に離婚し、それ以来、彼女は彼を家庭内暴力で告発している。

彼は「内部からの腐敗したシステム」や汚職、オルバーン氏の強硬な政策を非難する一方で、自身の保守的なイデオロギーを放棄してはいない。そのため、移民問題に関しては非常に厳格な立場を堅持する一方、オルバーン氏から攻撃を受けているLGBT+の権利については曖昧な態度をとっている。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、選挙の結果を受け、「今夜、ヨーロッパの心臓はハンガリーでより強く鼓動している」と歓迎の意を表明した。EUとしてはオルバーン政権で凍結していた法的・財政的対立を終わらせるとしている。

ハンガリーが04年から加盟しているEUは、オルバーン政権が法の支配を損なっているとして、数十億ユーロの資金を凍結したが、マジャル氏は医療や教育といった放置されてきた公共サービスを改善するためEUとの関係を再構築し、これらの資金を解放する意向だ。

中道・社会民主党に背を向ける進歩派や労働者

世界的なエネルギー危機や地域紛争の影響から生活費の高騰が人々の生活を脅かす中、欧州で大きな勢力だった中道的な政策を追求する中道左派政党の支持層が政党に背を向けつつある。ポルトガル、デンマーク、ハンガリーの選挙で、社会民主主義政党の崩壊が止まらない。

経済難に苦しむ有権者に有効な手を打てなくなり、選挙のたびに劇的低迷に見舞われている。26年秋の任期満了を待たずに実施された3月24日のデンマークの議会総選挙で、現首相のメッテ・フレデリクセン党首率いる中道左派の社会民主党が最大勢力を維持したものの、前回選挙から12議席落として38議席となった。

一方で、右派のデンマーク国民党は11議席増やして16議席、左派の社会主義人民党は5議席増の20議席となったが、過半数の90議席に達する政党はなかった。

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【中道主義のわな】

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