共学化や有力大学の系列化が志願者を増やし、入試偏差値を上げる“特効薬”になることは、数々の前例が示している。しかし筑女はその選択を取らず、この10年で段階的に募集人員を削減した。
筆者の高校時代は1クラス50人超の1学年13クラスというマンモス校だったが、現在は1クラス約35人の11クラス編成。定員を埋めるために特効薬に頼るのではなく、生徒が学ぶ環境の向上に投資することにした。
通信制の設置にあたって、「通信制だけでも共学化してはどうか」との意見も出たという。県立共学高の勤務が長い佐伯教諭も、その一人だった。
佐伯教諭は「結局通信も女子高で始めることになったので、開き直って『九州の通信制課程で唯一の女子高です』とアピールしたら、女子高だから安心できますと入ってくる人が多くて、異性の存在を気にしなくていい場所が必要とされているのを感じた」と話す。
通信制課程では、異性との接触を避けたい生徒には女性教員が面談するなどの配慮も行っている。
筑女の創設者は1900年に渡米した際、日本人女性と米国人女性の知識や技能の格差に衝撃を受け、帰国して女学校を設立したという。それから1世紀あまりを経て、日本の女性の教育水準は大きく向上した。福冨事務長は「女性を取り巻く環境は学校設立時とは変わっている」と認める。
一方で、「筑女はマイノリティに教育機会を提供したいという使命感から設立されました。どの時代においても標準的な教育システムにはまらないマイノリティは存在するし、創立の原点を考えれば通信制をつくったことは適切な判断だと思います」と語った。
筑女は中高で3人の養護教員体制だったが、2026年に看護師資格を持つ養護教員を新たに2人採用した。通信制に限らず、全生徒の心身の健康への目配りを強化するためだという。
不登校は「特殊」な存在ではない
筆者が高校生だった1990年代は、高校に入学したらよほどのことがない限り卒業するのが当たり前で、不登校や中退、転学は別世界の話だった。
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【教育システムの転換点に来ているのかもしれない】
