振り返れば、小学校までは勉強に自信があり中学受験もうまくいったが、だんだん文字量の多い課題を読み切ることができず成績が落ちていった。
「音読はできるけれど、内容が頭に入ってこない。特に英語の文章は読み進めることが難しく、中高時代は英語の宿題を一度も出せなかったんです。大学も目標を下げて受験しました。面接が得意だったので就職はできましたが、研修では上司が隣にいても読むべき資料の中身が頭に入ってこず、意識が途切れて寝落ちしてしまい怒られてばかり。ずっと無力感を感じていました」(森分氏)
日本人の人口の7〜8%がディスレクシアと言われているが、社会的認知度はいまだに高くない。森分氏も自身がディスレクシアであることに気付かなかった。
「自分も当事者であることがわかったときは、これまでの答え合わせができたような安心感がありました。一方で、わかっていれば対策できることもあったかもしれない、人生ももっと違ったのではないかとも思いました。自分と同じような人を減らしたいという思いが、事業を動かすうえでの燃料になっています」(森分氏)
「読む・書く・提出」をワンストップで
そんな森分氏が目指したのは、学習現場で誰もが容易に使える「代読代筆ツール」だ。これまでも、読み書き困難の子どもに対する支援として、人による代読代筆やICTツールの活用という方法はあった。しかし現実的には、人が不足している中で、すべての学校で子ども1人ひとりに教職員が寄り添って代読代筆をすることは難しい。
「ICTツールも操作がスムーズではないものや、『読み』と『書き』の支援が分離しているものが多かった。どうしたら楽に使ってもらえるか、子どもたちの学習の足を引っ張らないようなものができるかという点を追求し、『読む・書く・提出』がワンストップで可能となるアプリを開発しました」(森分氏)
具体的には、ユーザーが学校のプリントや教科書などをタブレット端末で撮影すると、独自のAI自動解析エンジンが教材をデジタル化。読み込んだデータの文章をタップするだけで、自然な音声で読み上げてくれる。
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【「当事者」である開発者の思い】
