例えば「手しごと」を表現するのが蕎麦屋、寿司屋などの飲食店や、靴のリペアや販売等を行う物販サービスの店だ。プロジェクトが始まって間もない2015年に「浜町かねこ」をオープンさせて以降、数は増え続けている。
ユニークな例として、2019年にオープンした浜町ホテルにチョコレート工房を併設したショップ&カフェの「nel craft chocolate tokyo」が挙げられる。浜町ホテルは外壁に植物を這わせ、「緑」の見えるまちを表現してもいる。
テナントの誘致や物件の取得・開発を担当したのは安田不動産の開発事業本部。全国を回り、自分の足と舌を使って、飲食店やショップなどのテナントを探してくる部隊だ。「これは」という店を見つけては、一本釣りを仕掛ける。しかし一等地というわけでもないため、来てもらうのは簡単ではない。
オーナーに「刺さる」条件を提示
同本部開発第三部長の笠井信行氏によると、オーナーに「刺さる」条件を提示したことがポイントだったそうだ。
「商業施設の中などでなく独立した店舗を持てるのは、出店を考えているオーナーには魅力。有名な商業地より賃料の相場も安い。何より、建物を作る前に契約するので、店舗設計にオーナーが関われるというのが刺さった。オーナーが建物に愛着を持ってくれれば、街にも定着してもらいやすいという、こちら側のメリットもある」
開発プロジェクトのスタートから13年が経ち、今では多くの魅力的なテナントが入居しているが、その中から一つ、2016年にオープンした「富士屋本店 日本橋浜町」を紹介する。
元は築55年の釣り堀を改装した有名店「三軒茶屋富士屋本店グリルバー」。建物の契約期間が切れたため移転先を探しており、店の馴染みだった安田不動産の社員から「一本釣り」された。
看板メニューは鶏レバームース、イカクリームコロッケ、天然真鯛パイ包み焼きなど。
ムースはなめらかな舌触りで濃厚。ワッフルコーンと一緒にペロリと食べられる。カニならぬイカクリームコロッケは見た目に圧倒されるが、無二の味だ。パイ包み焼きは切り身の他にすり身も使ってあり、中に詰められたドライトマトと大葉がコクと爽やかさを添える。間違いなく白ワインが進む。他のメニューを味わいにまた来てみたい。
2階のテーブル席は予約必須だが、1階の立ち飲みならふらりと来ても潜り込める可能性が高い。
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