さらに住田氏は、日々の関わり方として「面白がる姿勢」を挙げる。教職員の意見やアイディアを、否定や評価から入るのではなく、「面白い」「興味深い」とまずは受け止める。その違いが、職場の空気を変える。そして最後に必要なのが、謙虚さだ。
「自分は間違っているかもしれない、という感覚を持ち続けること。それが結果として、周囲との関係を開いたものにしていきます」
校長会・評価・研修をどう変えるか
パワハラ問題を個人の努力だけに委ねず、仕組みとしてどう防いでいくのか。
前半で見てきたように、校長自身の「ご機嫌マネジメント」や「自己認識」は重要な要素だ。しかし、住田氏はそれだけでは不十分だと強調する。
「個人の努力だけに任せても、限界があります。構造を変えることを考えていかなくてはいけません」
住田氏が挙げるのが、三つの改革である。①校長会、②評価制度、③研修――つまり、「校長を取り巻く環境」である。まず校長会について、住田氏はこう指摘する。
「現状として校長会は、説明や講演を聞いて終わるなど受け身の場になりがちです。しかしそれでは各校の課題は共有されません。求められるのは、校長同士が対等な関係で課題を持ち寄る場への転換です。フラットな関係性で、ワークショップ形式にしていく必要があります」
その転換を阻んでいるのが、ヒエラルキーの存在だ。上下関係が前提にある場では、本音が出にくくなる。特に「うまくいっていないこと」は語られにくい。だからこそ必要なのが、ヒエラルキーに縛られない場づくりだという。ファシリテーターを置き、対等な立場で安心して発言できる環境を整える。
「大事なのは、いいところだけではなく、うまくいっていないことも含めて共有することです」
成果だけでは学びにならない。課題まで含めて初めて、他校でも生かせる知見になる。「校長会が変わる」とは、「何を学ぶか」ではない。「何を語れる」かが変わることを意味する。
次に住田氏が問うのが、教育委員会の評価のあり方だ。
「 “見えるところ”で判断する構造になっているんですよね。教育委員会は校長の言うことだけを鵜呑みにするのではなく、いろいろな先生からヒアリングすることが大事だと思います」
校長の報告や説明だけでは、現場の実態は見えない。だからこそ評価は、一方向ではなく多面的であるべきだという指摘だ。さらに重要なのが、「学校の課題を認識しているか」という視点である。
「成果や良い点しか言わない校長は、むしろ疑ったほうがいいのではないでしょうか」
その実態を把握する手がかりとして、学校評価アンケートの活用も欠かせない。数値や自由記述には、現場の空気や違和感が表れる。まずは、そうした“声”を丁寧に拾うことが出発点になる。さらに大切なのが、 “日常を見る”という視点だ。
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【校長は「空気」を作る存在】
