市費で「エース級の正規教員」採用に成功した鎌倉市、今度は「先生の学び」の支援を開始→なぜ《予算の壁》を突破できた?
一方、「個の学び」を支援する施策としては、教員の学びにフォーカスを当てたイベント「Teacher’s Learning Day(仮称)」の開催や、先進地視察プログラムが予定されている。
視察先には石川県加賀市や山形県天童市立天童中部小学校などの先進校が想定されており、1人あたり約8万円の予算で、2泊3日程度、年間約10名の派遣を目指す。
さらに2年目以降は、「『シブヤMy探究』の先生版のようなイメージ」(小原氏)で、教員自身が学びたいテーマを申請して支援を受ける仕組みも構築される予定だ。
こうした各取り組みの成果報告については、細かなレポート提出などを求めるのではなく、イベント内で発表の場を設けるなどして、そこからさらにほかの教員が刺激を受ける「学びの循環(エコシステム)」の構築に注力していくという。
「これまでの教員研修は、行政がメニューを決めて『受けてください』という形になりがちでした。しかし、子どもに『学習者中心の学び』を実践してほしいのであれば、先生も主体的に学ぶ必要があります。このファンドを通じて先生たちがワクワクしながら学ぶことで、子どもたちがもっとワクワク学べる授業になっていくと考えています」
単なるファンドではない「教育行政のR&D」
鎌倉市はこのファンドを単なる一自治体の施策に留めず、「教育行政におけるR&D(研究開発)」と位置づけている。5年間の時限付きとしたのは、その期間中に教員の教育力が向上するというエビデンスを蓄積し、将来的には「一般財源を充当した継続的な支援体制」へ移行させるための実験期間と捉えているためだ。
「これからの5年間でさまざまな試みをする中で、成功するものもあれば失敗するものも出てくるでしょう。しかし、そのプロセスや成果を公開することで、ほかの自治体にとってもベンチマークになればいいと考えています。『鎌倉市でこの施策がうまくいったから、うちの自治体も一般財源で予算化しよう』という先行事例として、ぜひ真似してほしいです」
こうした挑戦を支えているのが、きめ細やかな情報発信だ。鎌倉市教育委員会は公式noteを運営し、学びの多様化学校の開設までの歩みや、寄付金を基に探究学習の充実を図る「スクールコラボファンド」を通じた外部専門家との協働の様子などを、豊富な写真とともに伝えている。教育現場の試行錯誤を可視化することで、寄付者や市民を「教育の当事者」へと変えていく広報戦略が、外部支援者の呼び込みにつながっていることは想像に難くない。



















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