発達に特性のある子だけではなかった…「特別支援教育」は全人類に有効、すべての子が学びやすくなるサポートのヒント

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

この問題について、平熱先生は率直にこう語る。

「合理的配慮って、その子にとって、本人の努力だけでは乗り越えにくい困難をサポートすることなんですよね」

ただし、この「困難」は、外からは非常にわかりにくい。

「正直、外からはわかりにくいものです。だから、説明だけで伝えるのは難しい。大事なのは日常の関わり方で、当たり前にできている子どもたちを認め、きちんと褒めることです」

特定の子どもだけが評価されると、不公平感が生まれやすい。しかし、すべての子どもの「できていること」を丁寧に認めていけば、教室全体の空気は変わっていく。結果として、「特別扱い」ではなく「必要なサポート」という理解が、自然と広がっていく。

合理的配慮は、言葉だけで説明して納得させるものではない。教室の中で積み重ねられる日々の関わりの中で、伝わっていくものだ。そしてその土台にあるのは、「すべての子どもをきちんと見る」という、ごくシンプルで本質的な姿勢だ。

では、そのような視点はどう身につけるのか。平熱先生は「テクニックよりも、日常の中での気づきが重要だと思います」と語る。

「本を読むのもいいんですけど、私の場合は、街やお店で『なんでこのメニューは見やすいんだろう』『なんでこのお店に入りたくなったんだろう』などと考えるようにしています」

例えば、落ち着いた照明や色使いの空間は居心地がいい。逆に刺激が強すぎると落ち着かない。そうした「環境の設計」は、そのまま教室づくりにも応用できるという。

さらに大切なのが、「感受性」だ。

「例えば、何かの手続きや検査の説明を受けているときなど、自分はわかるけれど『今受けた説明をそのまま子どもにしたら伝わらないな』と思うことが結構あるんですよ。じゃあどう伝えるかを考えるんです」

言葉なのか、写真なのか、動画なのか。そうした違いに気づき、伝え方を選び直す“感受性”が、支援の質を高める。

支援とは、特別な技術の積み重ねではない。「なぜこの表示は見やすいのか」「なぜこの説明はわかりやすいのか」――そうした視点を教室に持ち込むことだ。必要なのは、“正解”ではなく“視点”である。

支援は“個人戦”ではなく“チーム戦”

こうした視点を教室で生かしていくうえで、もう1つ欠かせない前提がある。教室での支援は、担任1人の力で完結するものではない。むしろ、「1人で抱え込まないこと」こそが、学級経営を安定させるカギになる。平熱先生は、この点をきっぱりと言い切る。

「1人で抱え込んでも、なかなかうまくいかないんですよね。シンプルに考えても、あまりいいやり方ではないと思います」

うまくいかないときほど、「自分が何とかしなければ」と背負い込みがちだ。しかし、その姿勢自体が、支援を難しくしてしまう。では、どう動くべきか。

「困ったら、すぐにヘルプを出したほうがいいと思います」

ただし重要なのは、“頼り方”だ。一方的に「助けて」と言うだけでなく、支え合える関係であることが求められる。

「自分も何か差し出せるカードを持っておくことが欠かせないと思います。例えば、子どもの様子を共有したり、別の場面でフォローに入ったり。お互いの“困った”を交換できる関係がいいですよね」

支援は個人戦ではなく、チーム戦。では、誰に相談すればいいのか。平熱先生が最も重視するのは、「その子を一緒に見ている人」だ。

「本やネットで調べるのももちろんいいと思いますが、それはあくまで一般的な話。実際には、その子がどんなときに困るのか、何ならできるのかは、一緒に見ている先生同士で話すほうが見えてきます」

同僚、保護者、特別支援コーディネーター、必要に応じて外部の専門家など複数の視点を重ねていくことで、見立ての精度は高まる。そして、その前提となるのが「わからないことを隠さない姿勢」だ。

目的はあくまで、子どもの成長である。支援とは、人と人とが関わり合いながら、環境を整えていく営みだ。

学級経営を支えるのは、テクニックでも根性でもない。子どもをどう見るか、そして大人同士がどうつながるか――それが平熱先生の示す視点である。特別支援教育の知見は、特定の子どものためのものではない。教室という場を、誰にとっても学びやすい場所に変えるための“共通言語”であるといえる。

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
長島 ともこ フリーライター&エディター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ながしま ともこ / Tomoko Nagashima

育児、教育、PTA、暮らしのジャンルを中心に、書籍、雑誌、PR紙、WEB媒体において取材、執筆、企画、編集、講演等の活動を行っている。また、自身のPTA活動や記事執筆を機に、全国のPTA仲間と「PTA・保護者組織を考える会」を立ち上げ、情報発信やイベントの運営、PTAやP連からの相談活動等を行う。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事