製造業:(50代)
コンサルタント:(40代)
通信(元):(60代)
電機:(50代)
金融系:(50代)
IT:(40代)
メディア:(30代)
進行:岸本吉浩(東洋経済編集部)
規制対応や補助金目当ての環境対策が優先
――昨年、お2人のサステナ専門家が中堅企業の取り組み課題について議論を行いました(内容はこちら)。この中でも、時価総額5000億円未満の中堅上場企業の間で、サステナビリティに対する熱量が下がっていることがよくわかりました。より現場に近い皆さんが日々接している企業の現場では、どうでしょうか。
製造業:「環境(E)」への偏重が課題になっているように感じます。SDGsの有名な図に「ウェディングケーキモデル」があります。一番下の土台が「環境(生物圏)」で、その上に社会や経済が乗っている図です。
しかし、あれは環境学者が作ったモデルのため、環境が一番下になっています。私が現場でサステナビリティに取り組んできた実感からすると、企業活動のベースは間違いなく「人(S)」です。極端な話、人権や働きやすさ、ダイバーシティといった「人の部分」をまず固めるべきで、それを行えば結果として不祥事も減り、ガバナンス(G)もよくなります。
コンサルタント:同感です。しかし実際のお金の動きでは、政府のGX(グリーントランスフォーメーション)関連予算など、巨額の資金が「環境」に投じられています。企業も「補助金が出る」となると飛びつきます。
本質的な「人」の課題よりも、規制対応や補助金目当ての環境対策が優先されてきたのがここ数年の日本企業の実態です。IT企業やサービス業など、直接的な環境負荷の少ない企業が、欧米の真似をして「2050年ネットゼロ」等の環境目標を掲げても腹落ちしないという問題もあります。
通信(元):「サステナビリティ」という言葉自体が、現場のハードルを上げている気がしてなりません。私は最近、フリーランスとして「サステナビリティ・アドバイザー」という名刺を配っています。
しかし、名刺を出すと「高尚なことですね」や「特殊なことですね」といった感じで距離を置かれ、自分ごととして捉えてもらえません。本来は全社員に関係する泥くさいビジネスの話なのに、どこか「意識高い系のバズワード」になってしまっている。だからいっそ、「社会的責任アドバイザー」に書き換えようかと思っているくらいです。
製造業:中堅企業は無理をする必要はありません。「当社はそれほどCO2を排出していないので、これ以上は取り組みません」と自らの意思で判断し、割り切ることも1つの道です。どこまでやるかという本質が問われているのに、横並びで義務的にやらざるをえないことだけを行っている企業が多い印象です。
電機:ただし、サプライチェーンの観点からは逃げられないので注意が必要です。自社が最終製品を作っていなくても、部品の供給網に入っている限り、環境や人権への対応はビジネスの「取引条件」になっています。これを怠れば、ある日突然、静かに取引を切られるという調達リスクに直面することになります。
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【中堅上場企業の取り組みはムリをしない】
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