なぜ「Nemawashi」は英語になったのか? 日本特有の「根回し」が、世界でも"不可欠の交渉術"と認められた理由

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日本のビジネス文化においては、この根回しがさまざまな場面で必要とされています。特に、重要な意思決定の準備段階では、決定の前に根回しをしておくのが当然だという会社もあります。そうした会社では、会議に提案が上がる時点ですでに話はついています。

つまり、主要な関係者からの支持を事前に得ていることが多いのです。このような「事前調整」が、意思決定に大きく影響することはよくあります。

日本企業におけるネマワシの重要性は、海外の学術論文やビジネス書でもたびたび取り上げられています。アメリカの研究者マイケル・ウルフは、根回しが合意形成を円滑にすると述べています(Wolfe, 1992)。根回しによって、利害の異なるメンバーの意見をあらかじめ調整することができ、衝突が避けられ、合意形成がスムーズになるからです。

また、同じくアメリカの研究者であるマイケル・フェッターズも根回しに注目しています。彼によれば、根回しは日本の「意見表明よりも合意形成が重視される文化」の反映です。そして、根回しには「裏工作」「陰謀」といったニュアンスがあるものの、創造的な合意形成手法という側面もあります(Fetters, 1995)。

ネマワシは、海外の人にとってはやや奇妙なものに見えているかもしれませんが、そのポジティブな面も広く認識されています。グローバル企業の中には、日本に赴任予定のビジネスパーソン向けの事前研修において、ネマワシを学習項目の一つに入れているところもあります。

いまや「ネマワシ」は、日本独自の文化的慣行という枠を越え、グローバルビジネスのキーワードとして英語圏でも認識されるようになっています。

海外にもあった「根回し」  

「ネマワシ」は日本特有のものだから海外では必要ない。そう考える人も多いかもしれません。実際「海外では意思決定が早いから根回しは必要ない」と考えている日本人は結構います。そのため、グローバルな場面でネマワシを省略し、案件をいきなり会議に持ち込んでしまうのです。

ところが、そうしたやり方はうまくいかないことが多いのです。事前の相談なしで発表すると、関係者の反発を招くことがあります。それは、日本の会社で「ちゃんと根回ししたのか」と言われるのと同じです。「Nemawashi」という言葉が英語でも使われるようになったのは、ぴったり合う単語が英語にはなかったからです。

「ネマワシ」が英語になっていることは、英語圏に根回しと「似たようなもの」がないということではありません。あるものを表す単語がないことと、それが存在しないこととはイコールではありません。

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