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《世界幸福度ランキング》日本が55位に沈む深刻理由 「失敗を許さない」「レールから外れることを恐れる」強固な同調圧力

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人間関係や文化的体験という「一見無駄に見える豊かさ」まで排除すると、社会の孤立化を招きます(写真:eizan/PIXTA)
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情報に接する入り口としてはよいのですが、結果として、表面的な知識は得られても、深い理解や洞察には至らないのです。

「孤独な合理的弱者」にならないように

さらに、人間関係もタイパの対象になっています。

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「この人と付き合っても自分にメリットがない」と判断されれば、関係を切ることが合理的とみなされます。しかし、人間関係の価値は必ずしも即座に目に見える形では現れません。何げない会話や共有する時間のなかから、思わぬ発見や心の支えが生まれることもあります。効率だけを追求する姿勢は、こうした「無駄に見える豊かさ」を失わせているのです。

国立社会保障・人口問題研究所の調査では、日本の単独世帯(一人暮らし)は2040年には約4割に達すると予測されており、「つながりの希薄化(人間関係や地域共同体の絆が弱まり、社会的なつながりが失われていく現象)」は加速する一方です。

また、タイパ至上主義は文化や芸術の衰退にもつながりかねません。

音楽、映画、文学といった芸術作品は、時間をかけて味わうことでその真価を発揮します。しかし、「時間がもったいない」という理由で、こうした体験が敬遠されるようになれば、文化的な豊かさは失われていくでしょう。

「タイパ」とは、時間対効果を最大化しようとする価値観であり、現代を生き抜くための生存戦略です。しかし、効率を追求するあまり人間関係や文化的体験という「一見無駄に見える豊かさ」まで排除することは、社会の孤立化を招きます。

損得のみでつながりを選別する姿勢は、他者への不寛容を生み、異なる価値観を持つ人々との社会的分断を加速させます。また、時間をかけて文脈を味わう文化・芸術の衰退は、他者への想像力(共感性)を枯渇させ、精神的な幸福度を著しく低下させる危うさを孕んでいます。

効率の果てに、我々が「孤独な合理的弱者」とならないよう、あえて「非合理的な時間」というものの価値も見直す必要もあるのではないでしょうか。

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