パソコン熱が急速に冷めた僕は、勉強でも部活動でも運動でもなく、享楽的な方面へと堕ちていくことになる。ゲームセンターやビリヤードに興じたり、友達の家で徹夜麻雀をしたり。
もちろん、学校の成績は低迷したまま。親からは毎日のように「せっかく私立に行かせてやっているのに」と小言を浴びせられていた。
当時の僕の心は相当弱っていた。高校1~2年生のときのことがまったく思い出せないくらいだ。理由は明白。それまでの僕は、パソコンで自尊心を保っていたのだ。
成績が悪くても、学校がさして面白くなくても、「僕はみんなが知らない世界に詳しい」「時代の先端にいる」、そんな確固たる自尊心を保つことができていた。
しかし、パソコンが色褪せて見え始めると、将来の展望はなくなり、刹那的な快楽に流されていくしかなかったのだ。
実は「消去法」で選んだ東大
そんなイタすぎる僕にも、容赦なく進路選択の時期はやってくる。
藤田さんは「音楽のプロの道へ進むか否か」を悩んでいたが、それはかなり高レベルな悩みだと思う。なぜなら僕には「希望の道」も「希望の大学」も見えてはいなかったからだ。
ただ明確に願っていたのは、「ここ」ではない場所へ行くことだった(この点は藤田さんと似ているかもしれない)。
しかし、親が納得する形で僕が家を出ていくには、「東大に行く」という選択肢しか残されていなかった。
友達の多くは地元の国立、九州大学を志望している。しかしその場合、絶対に実家からの通学になってしまう。でも、馴染みのない大阪や名古屋を目指すのは、気乗りがしない。
やはり、出ていくなら東京だ。それも学費の高い私立ではなく、国立大学しかない。とはいえ、いくら都内の国立大でも一橋大学はダメ。うちの両親が知らない可能性があるからだ……。
そんなふうにロジカルに考えると、消去法で「東大」しか残っていなかった。
僕は失われた自尊心を取り戻すべく、東大合格に向けての受験勉強を始めた。書店で赤本(過去の入試問題集)を買い集め、自分なりの対策を立てた。
「社会は、百科事典を読み込んできた素地があるから大丈夫」
「理科は、配点が低いから後回しでいい」
「数学は、理系でなく文系に受かるレベルに落としてやっておこう」
「英語は、文法に惑わされないよう、まずは単語力を強化しよう」
目標を達成するには、このように己を知り、自分に合った対策を立てることだ。
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