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国内でわずか2社に減少も、消えそうで消えない「モロッコヨーグル」。"薄利多売"でも3代・65年間生き残れた理由

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このためサンヨー製菓は、時代に合わせてスーパーやドラッグストア向けにバーコード付きのパッケージを導入するなど、販路を広げてきた。現在は、駄菓子屋コーナーを設ける店が増え、問屋からの注文数は一定数をキープできているという。

「毎回選ばれなくていい」3代目の矜持

ところで、巨大なモロッコヨーグルを見たことはあるだろうか。モロッコヨーグルには派生商品として、通常サイズの約11倍の容量を持つ「ジャンボヨーグル」が存在する。

1996年頃、取引先からの「大きいのを腹いっぱい食べるのが夢だった」という要望により、製造が開始されたものだ。

はじめの頃先代社長は、「そんな大きいもん誰が食べる?」と断っていたが、依頼先から懇願され、市販の容器に絞り袋を用いて手作業で数十個を納品した。

するとその後、チェーン店での取り扱い店舗が増加したため、工場内で使用されていなかった機械を改造してライン製造を始めたそうだ。現在は週に1回のペースで稼働し、1日に6000〜7000個を製造している。

左がモロッコヨーグル、右がジャンボヨーグル(写真:筆者撮影)

しかもこのジャンボヨーグルは、見た目のインパクトからか、しばしばYouTubeやSNSで取り上げられるようになる。その中で、「大人買い」や「ボウル一杯食べる」という動画も登場し始めた。この状況に、池田さんは複雑な表情を見せる。

「あんまり好きじゃないです。やっぱり適度に量、ちょっと足らんぐらいがちょうどいいと思う。それが駄菓子やと思います」

そして、少し間を置き、こう言った。

「駄菓子屋さんには、いろんな駄菓子がいっぱいあるじゃないですか。 その並んでいるなかから選ぶのが子どもが楽しみだから、毎回モロッコヨーグルを選んでもらいたいとは思わないんです。『今日は何を買おうかな』って考える中の一つとして、長いこと残れたらいいって思ってます」

あくまで「子どもの小遣いで買える選択肢の一つ」であり続けること。 これこそが、モロッコヨーグルが愛され続けてきた理由なのかもしれない。

現在のモロッコヨーグルの箱。初代社長の「象のように、強く優しくたくましく育ってほしい」という願いから、デザインが変わっても代々描かれ続けている。現在のイラストは3代目(写真:筆者撮影)

取材の帰りがけに、池田さんからモロッコヨーグルをいただいた。自宅に帰り、筆者は家族とともに食べてみた。筆者の2歳になる娘は、モロッコヨーグルのフタを一人で開け、掬って一口食べ、筆者を見上げてこう言った。

「おいしい!」

その笑顔を見て、自分も子ども時代に戻ったような気持ちになった。

子どもたちは、この駄菓子が作られるまでに膨大な時間と労力がかかることを知らない。それでも池田さんはきっと、「それでいいんです。駄菓子ですから」と言うのだろう。

筆者の娘もひと口食べて「おいしい!」と笑顔に(写真:筆者撮影)
後編:「機械が止まれば会社が死ぬ」“こんなんで働きたくない”と思ったモロッコヨーグル社長が「75歳まで現役」覚悟するまで

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