国内でわずか2社に減少も、消えそうで消えない「モロッコヨーグル」。"薄利多売"でも3代・65年間生き残れた理由

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クリームはホースを通して容器に注入。その後、フタを乗せて熱で圧着し、専用の受け皿で複数個をまとめて箱に詰め、紐をかけて出荷する。

クリーム充填
専用機械でプラスチックの瓶にクリームを充填していく(写真:筆者撮影)

さらに製造工程には、四季のある日本ならではのひと手間がある。製品の主原料が植物油脂と砂糖であるため、夏の高温の時期になると溶けて分離してしまう。そのため、繊細な温度管理が欠かせないのだ。工場内では、冬場はホース内のクリームが硬化するのを防ぐために日中も暖房を稼働させ、春先は気温の上昇に合わせてクリームが粘着質にならないよう微調整を行っている。

しかも、ただ冷やせばいいというわけでもない。冷蔵輸送を行うと結露が発生し、同梱している紙製の箱や木製スプーンが痛んでしまう。だから常温での温度管理が必須となり、配送にもかなり気を遣う。夏場は外気を遮断するため、2層式の段ボールケースに……。

加えて出荷の際、毎日運送会社にFAXを送信し、直接配送業者に「午前中必着で頼みます。溶けるから気をつけて」と伝えるそうだ。利益約1円の駄菓子がここまで丁寧に作られ、配送されている事実に驚いた。その手間のすべては、子どもの口に届く瞬間のために費やされている。

密閉
カラフルなフタを、熱で圧着して密閉する(写真:筆者撮影)

「あの食感だけは守らなあかん」2度の原材料危機

モロッコヨーグルは、池田さんが3代目に就任してから2度、外部要因による大きな危機が生じている。1度目は狂牛病(BSE)問題だ。この時、取引していたメーカーは使用していた牛脂を取りやめ、100%植物油脂へと切り替えた。それを聞かされていなかった池田さんは、できあがったモロッコヨーグルの異変に慌てたという。

「作ったらホイッピング(泡立ち)がむちゃくちゃ悪くなって。空気の抱き込み方が全然変わって、ペシャっとしたクリームになってしまったんです」

このままではヨーグルの命とも言える、フワッとした食感が失われてしまう――。それは、引き継いだ家業を閉業させてしまう危険性をはらむものだった。

クリーム
池田さんが選び抜いた植物油脂と2種の砂糖を合わせてつくる特製クリーム(写真:筆者撮影)
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