『暮らしのおへそ』編集ディレクターが60歳を過ぎて手放した「褒められたい」の呪縛、「気にしい」が変わったきっかけ
人は誰でも、できるだけ、大きな評価を!と願いがちです。私も本の売り上げ部数が少ないとがっかりします。でも……。企画、編集を手がける『暮らしのおへそ』というムックが、2025年で20周年を迎えました。創刊号から買ってくださっている方から、こんなお手紙をいただきました。
「まだ自分のために自由にお金が使えないころ、雑誌は立ち読みするのが日常でした。ところが『暮らしのおへそ』は立ち読みだけでは満足できず、懸賞で当てた図書カードで、自分のために雑誌を買いました。それが私の『おへそ』デビュー。(中略)これから歳を重ねて生活も変化し、また自分のためにお金を使えなくなるときが来るかもしれないけど、『おへそ』だけは買います!」
その人の人生の中に一冊の雑誌が深く迎え入れられていることに、手を合わせて感謝したくなりました。「褒められる」は一瞬で散るけれど、「愛される」事実は決して消えない……。私が欲しいのはどっち?とあらためて考えたくなりました。
2本目、3本目の軸を準備しておく
私は「気にしい」なので、ちょっと誰かに注意されたり、否定的なことを言われたりすると、必要以上に落ちこみ、ひきずり、「まあ、こんなこともあるさ」と割り切れるまで、大層時間がかかります。
たった一言が胸に刺さり、仕事をしていても、ごはんを食べていても、胸の奥に刺さった小さな棘(とげ)の痛みがじんじんと広がり、気持ちが晴れません。
仕事で小さな失敗をしたり、頑張ったのに評価がイマイチだったりしたときにも、「私ってやっぱりダメなのかな?」「これから仕事を続けていけなくなったらどうしよう?」と、小さな穴がどんどん大きくなるように、悪いほうへ悪いほうへ考え続けてしまいます。
そんな自分の性格を、どうにかしたいとずっと考えていました。
この原稿を書いている日曜日、夜の7時からテニスのレッスンに行く予定です。夫は仕事で出掛けて夜8時ごろ帰ってくるというので、おでんの材料を買い揃え、出かける前に仕込んでおく予定。そんな段取りも苦になりません。6年ほど前から始めたテニスに、自分でもこんなに夢中になるなんて思ってもいませんでした。
きっかけは、心理カウンセラーの先生に「一田さんは、24時間、365日仕事のことを考えているでしょう?それって危険な状態だよ。もし病気になって仕事ができなくなったら、心までポキンと折れてしまいそう。もう1本の軸を用意しておいたほうがいいですよ。何か趣味を見つけて始めてみたら?」と勧められたからでした。
30代にフリーライターになってから自分で稼いで食べられるようにと夢中で働き続けてきました。休むことが怖かったし、走り続けていないと不安でした。でも……。
今、レッスンではバックハンドの特訓中です。両手打ちの場合、どうしても右手の力が強くなり、ラケットを必要以上に振り回してしまうので、ボールを確実に捉えることができません。そこでコーチから「右手はしっかり握らずに、親指を添えるだけにしてみて」とアドバイスをされました。
左手でコントロールするのは難しいので、自然に右肩を入れ、打つ瞬間に左肩を前へ出して、体全体で打つフォームになりました。すると、ボールがパコーンと飛ぶのです。そう、これが正しい打ち方というわけ。
その日上手くいったとしても、次回のレッスンではまた思うように打てず、まさに「3歩進んで2歩下がる」という状態です。これを何度も何度も繰り返し、体に覚えさせていくと、ふと気づくとちゃんとしたフォームで打てるようになっている……。この「ままならなさ」こそが、私がテニスに夢中になった理由かなあと思います。


















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