「教育コストを売上に」?社員の研修施設を"稼げる店舗"に変えた、岐阜タンメン「ラーメン+半チャン500円」のカラクリ
「開店から閉店まで、自分たちで店を回せるかを試します。発注や業者対応など裏方業務も担当し、店舗運営の全体像を学びます」(森さん)
3カ月目は卒業段階。既存店舗へ派遣され、環境が変わっても同じレベルで働けるかを確認する。基準に達しなければ配属は見送られるという。
低価格の裏にある「教育を利益に変える仕組み」
研修店舗でありながら、提供メニューは中華そばと半チャーハン、ギョーザに絞られている。主力ブランドの岐阜タンメンではなく基本メニューを採用した理由について、森さんは次のように説明する。
「ラーメンの基礎を学べる構成だからです。中華そばはシンプルな鶏ガラベースの醤油味で、スープづくりの基本を学びます。自家製麺を使用しているため、麺についても理解できます。一方、チャーハンは自動調理機を使用し、味のブレを抑えながらオペレーション習得に集中できます」
提供時間にも明確な目標がある。先頭注文は5分以内、それ以降も10分以内。サイドメニューはラーメン提供後1分以内。こうした数値目標が現場感覚を養う指標となる。
そして驚くのが価格だ。中華そば単品は400円、半チャーハンとのセットは500円、半チャーハンとギョーザのセットは600円。通常店舗と比べても破格である。
当然ながら店舗単体では大きな利益は出ない。しかし、研修専用施設を持てば費用はすべて教育コストになる。営業店舗として運営することで売上が生まれ、教育費の一部を回収できる。顧客は低価格で食事ができ、企業は実践的教育を行える。三者が利益を得る構造だ。
ラーメン業界には職人気質や厳しい上下関係のイメージが残るが、同社の育成思想は異なる。
「社員の成長スピードに合わせて教育すべきだと考えています。店舗拡大が進む中、本部教育と現場の忙しさの間に生じたギャップを埋めるため、この施設が生まれました」(森さん)
将来的には東海・北陸エリアで100店舗も視野に入れるという。同社にとって出店の鍵は設備ではなく人材だ。一見すると話題性を狙った格安店のようにも見えるが、実態はその逆である。この価格は値引きではなく、人材育成という長期投資の副産物として生まれている。
外食産業が慢性的な人手不足に直面する中、教育をコストとして切り離すのではなく営業の中に組み込み、事業として成立させる――。新人は実践の中で成長し、顧客は低価格という形でそのプロセスに参加する。
500円の半チャンセットは、単なる安さの象徴ではない。それは、拡大を続ける外食企業がどのように人を育て、組織を持続させていくのかという問いに対する、一つの実験でもある。
ラーメン一杯の裏側で進んでいるのは、外食産業の未来をめぐる試行錯誤なのかもしれない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら





















無料会員登録はこちら
ログインはこちら